第7話

「世界が変わってしまったんだ。ラノベとかによくあった魔物が地球で確認されるようになってしまったんだ」


康介くんの言葉に、僕は目を見開いて驚く。


「さっきみたいな竜みたいなのがいっぱいいるってこと?」

「ああ。原因は分からないが、1年前にいきなり魔物が見かけられるようになったんだ。俺達も襲われるまでは迷信だと思ってたよ」


康介くんは項垂れる。


「それで結構前にここも封鎖されて、長崎から人がいなくなったんだ」

「道理で人が全くいなかったんだ……でもどうして康介くん達は長崎に残ってるの?」

「自衛隊のヘリで俺達も撤退するつもりだったんだ。それをさっきの竜が攻撃して墜落したんだ」


そのせいで康介くん達は取り残されたのか……。


「それから俺たちは墜落したヘリの中から無線機とラジオを見つけたんだ。壊れてなかったのが幸いだった。それで社会的な変化は知ることができた」


康介くんの話によると、全世界で魔物対策機関(Demon measures period=DMP)というのが設立されて、魔物についての調査や駆除を行うようになったらしい。


「今は長崎県だけが閉鎖されていて、関係者以外は入ることができなくなってる。でも直ぐに九州地方が閉鎖されるかもしれないと思うんだ」


康介くんは言う。そしてこの次の話が重要だった。


「DMPに加えて、ランキング制度が設けられたんだ」

「なにそれ」

「DMPが設立されて直ぐにラジオで知ったんだ。世界中の全ての人が強い順にランキングがあるってことが分かったらしい」

「これを見てくれ。『ステータス』」


康介くんの言葉に反応して、ゲームでいうウィンドウのようなものが現れる。


そこにはこう書かれてあった。


【ステータス】

名前 神谷 康介

種族 人間

順位 51,526,862


「……」

「びっくりしてるだろ。いきなりこんなことになってるからな」

「うん」


確かに驚いた。

異世界あっちと全く同じだ。


表示も似てる。


でも、違うところがいくつかある。

異世界で表示されていたのは、名前と種族、そして職業だった。


異世界では人間以外にも色んな種族がいたし、職業もいっぱいあった。


僕は勇者という職業だったけど、職業によって得られる能力があるらしく、僕は戦闘に特化していた。


対して、今僕が見ているステータス表示はどうだろう。


名前や種族までは異世界と同じだけど、職業という欄はない。


「順位を見れば分かるけど、俺は全世界の中で5000万ぐらいってことだ。どういう理屈でこうなってるのか分かってないけど、今じゃこの数字が世界の基準らしいんだ」


ランキング制度。DMP。分からないことだらけだ。


じゃあ僕のステータスも表示が変わってるのかもしれない。後で確認しとこう。


「大体は分かったよ。次は僕の番だよね」


僕は一旦深呼吸をして呼吸を整える。

大丈夫、康介くんになら行っても問題ない。


「僕はこことは違う世界にいたんだ」


そう言うと康介くんは笑う。


「冗談きついぞ天雷。こういう状況っていうのに余裕だな」

「冗談じゃないよ!ほんとなんだ」


真剣な表情で僕は言うと、康介くんも笑うのをやめる。


「その話は本当なんだな」

「うん。そこに僕は3年間いたんだ」

「だから驚いてたのか。こっちは1年しか経ってなかったし、人もいなくなってたから」

「それで、さっきの竜も異世界にいたんだよ」

「はぁ?どういう事だ!?」


僕は3年間の出来事を康介くんに語った。

康介くんは「嘘だろ…」と驚いている。


「俺も天雷の事情を把握できた。そこにいる……スフィアさんは天雷が連れてきたってことだな」

「うん」

「それにしても、その異世界の奴らも酷いよな。天雷は何も関係ねえのに召喚するなんてよ」

「そうです!」

「おわぁ!」


今まで僕の隣で一言も発さなかったスフィアが声を荒らげた。


「本当にそう思いますよね」

「お、おう。いきなりでびっくりしたぜ」

「失礼しました。では改めまして自己紹介をを、私は主に使えるメイド、スフィアです」

「うん、ちょっと待って?いつから僕のメイドにジョブチェンジしたの!?」


康介くんも引いている。


「マジかよ天雷。そういう趣味だったんだな」

「違うって!」

「冗談だよ。天雷はそんなことをするやつじゃないってのは分かってるからな。でもなぁ」

「どうしたの?」

「3年も住んでたってことは2歳年上ってことになるのか?」

「それは分からないけど、僕としては康介くん達と同じ年齢だって思ってる」


ということは、17歳じゃなくて15歳になるってことだけど、全然問題ない。


「じゃあそういうことにして。康介くんに聞きたいことがあったんだ」

「どうした?」

「妹の事だよ。雪音は今どうしてるか分かる?」

「安心してくれ。無事に避難できてるはずだ。多分今は東京にいると思うぞ」


雪音は無事だったんだ。


その事に僕は安堵する。


「それが聞けて安心したよ」

「質問はこれだけか?」

「うん。今のところは」

「じゃあ今からデパートに来ないか?」

「いいの?」

「もちろんだ。それに異世界にいたことを知られたくもないだろ?その事は俺とお前の秘密だ」


やっぱり康介くんは分かってくれた。


話していて正解だったな。


「分かった。しばらくはここに留まるよ」

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