第4話

さて、一旦家に戻ってきた僕とスフィア。


「状況確認を優先するよ。とりあえず僕が召喚されてから地球に戻るまでに3年かかったから、3年経っていることにしようか」

「分かりました」

「それで、状況確認だけど電気はつきません。そもそもここ一帯が電気が通っていません」

「そうですね」


スフィアには家に帰る時に地球のことについて話しておいた。

と言っても微々たることだけだけど。


「そして水道も一緒です」

「うん。水が通っていません」

「ですが…」

「何故か魔法が使えまぁぁす!!」


半ば発狂しながら僕は『ライト』と呼ばれる魔法を使った。


『ライト』は簡単にいえば球体の電球だ。ただ、電球と違うとこは触っても全然熱くない。


「どうして魔法が……?」

「気づかなかったのですか?」

「え、何に?」

「魔力が辺りに漂ってますよ」

「嘘でしょ!?……あ、本当だ」


異世界あっちは魔法っていう概念が存在していた。


魔力を媒介として魔法を発動するわけだけど、魔力というのは周囲にある魔素というものを変換したものだ。


だから魔素があれば魔法を使うことが出来るんだけど……。


「地球にも魔素があったんだ」


だったら、魔法が使えたかもしれないんだな。


「そもそも、気配察知は魔力を感知するものですからね」

「あ、そうなの?」

「はい。主の気配察知は人並外れているので魔力の有無に関わらず察することができているだけです」


軽く人外認定されてるよ。


「まぁ、気配察知のことはとりあえずもういいとして、あとは食料だね」

「れいぞうこというものには何も入ってませんでしたね」

「そもそも3年も経っているし、電気も通っていないからあっても腐ってるよ」

「確かにそうですね」

「そして僕等がこれからすることは一つ。妹を探す」

「……はい」

「やっと帰ってこれたんだ。今度こそ守らないとね」


僕の決意にスフィアも頷く。


「じゃあまた外に出て人を探そうか」

「分かりました。私は準備が必要ありませんので、先に外で待っています」

「うん。僕もすぐに行くよ」


スフィアが外に出るのを確認すると、僕は和室に行き、仏壇の前で正座する。


「父さん、母さん。驚いてるかな?久しぶりだね」


線香を二つ備える。


「冗談って思うかもしれないけど、僕は今まで地球とは違うちょっと変わった世界に勇者として召喚されたんだ……驚いたかな?」

「それでね、3年ぶりにここに帰ってきたんだよ。僕ももう17歳になったんだ。ちょっとは背が伸びたかな?」

「そこで僕はスフィアって子を連れてきたんだ。彼女とかじゃないよ。異世界でできた大切な家族なんだ」

「それと、異世界から持ってきたんだけどこの花を飾っておくよ」


僕は魔法マジックボックスと呼ばれる袋から白い花を取り出した。


魔法袋は、簡単にいうとなんでも入れられる袋だ。

だけど、この袋の中は時間が止まってるみたいで、熱いものを入れていても取り出した時には熱いままになってる。


素晴らしい道具だ。


そして僕が取り出した白い花は、天の楽園バレンガーデンで見つけた花で、名前は知らない。

でも、とても綺麗だったから摘んでおいた。


「綺麗だからちょっとだけ持ってきたんだ。ねぇ、父さん、母さん。どうしてみんながいなくなったの?雪音ゆきねはどこに行ったの?」


もちろん、言葉は返ってこない。


「何かあったのかもしれないんだね。だけど僕は誓うよ。妹だけは……雪音だけは何があっても守ってみせるよ。だから安心して待ってて。今度は雪音とスフィアと3人で一緒に帰ってくるから」


僕は和室を出てスフィアが待つ外へと向かった。


………………………………………

「ねぇ、あなた」

「ん、なんだい?」

「聞いた?天雷ちゃんは異世界とかいう所に行ってたそうよ」

「そのようだね。この花も見た事がないし」

「帰ってきてびっくりしたわ。大人っぽくなってたし可愛い女の子も連れてきてたわよ」

「そうだな。天雷も見ないうちに大きくなったもんだ」

「それに、異世界は時間が経つのが早いのね。だって天雷ちゃんがいなくなって1・・だったんですもの」

「不思議な世界に行ってたんだな」

「雪音ちゃんもびっくりするわよ」

「そうだね。天雷はこれから頑張ってもらわないといけないからな」

「ええ。もし本当に異世界に行ってたんだとしたら地球が大変なことになってしまったことに気づくはずだわ」

「私たちは死んでしまったから何も出来ないのが悔しいな」

「そうね。でも、天雷ちゃんなら大丈夫よ」

「うん。天雷と雪音、そしてスフィアさんと言ったかな?その子と3人で帰ってくるのをゆっくりと待とうか」

「そうね」


そして、何も聞こえなくなった。

その声を聞いたものは誰もいなかった

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