その5

~~7年目~~


 あぁ、私はなぜ今までティタァヌス様に逆らっていたのか。年記を記すにあたって久しぶりに読み返したのだが、まぁなんてバカバカしいこと。なぜ、ティタァヌス様への抵抗としてこれを書き始めたのだろうか?

 今、私はティタァヌス様を布教するという目標を持ってこの年記を記している。布教の禁止をご命令されているため、誰かが見つけてくれることを願っている。


 私は家族と共に暮らしていましたが、ティタァヌス様のご命令通りに家から出て、今は格安のマンションにて生活している。裕福では無いが、今私は確かな幸せを感じている。

 暇な時は常に心にティタァヌス様を思い浮かべる。こうすることで、心はこれ以上ない落ち着きを取り戻すのです。

 あぁ、なんて幸せ!ティタァヌス様の仰せのままに!!!


 教会で、私はあの女性ととても久しぶりに会話をした。

「お久しぶりです!顔から見るに、疲れが随分和らいだようですね」

「はい!ティタァヌス様の有難みを悟った瞬間、私の中の霧が霽れました!」

 満面の笑みがそこに2つ浮かんでいた。あぁ、これもティタァヌス様のおかげ!


 案内された客間。初めて訪れた時のような異様な雰囲気は今も感じる。しかし、それは不気味といった気分では無い。神聖かつ素晴らしい、素敵な空間。そんなふうに感じる。

 掛け軸も、座布団も、最近増えた小さなちゃぶ台も。全てが美しく、神聖で、素晴らしい。

 ワクワクとした気持ちでご命令の入った便箋を開封する。


【善人であるべからず】


 ほう、いやしかし、私はどこまですれば善人でないとティタァヌス様に認めてもらえるのだろうか?

 私に出来る最大限の悪……。すみませんティタァヌス様……。私にはまだ少なからず良心が残っております。この程度の悪で留まること、お許しください。

 私が善人ではないと、どうか認めてください。


~~8年目~~


 やはりティタァヌス様は私のことを考えてらっしゃます。

 私には今立派な一軒家かありあす。じっかです。善人であるべからず。ティタァヌス様のおかげでで私はいまとって、幸せで。


 実家にいましたちちとははははははは。

 なぜか、私の手が震えて気はした。なんでだろう?、おかしいなぁ

 確か、ちょうど1年前あの夜、家帰ってきてかう、ち、ちっ父と、ははは、は、母がいたから……。

 持ってたハサミで、いやぁぁっと。

 残りカスは、全部、おいしいかったなあはは。


 私が生きてるのは、私が善人じやないから。ありがとうござます、ティタァヌス様。


 たすけて


 教会の中は、いつも通りなんもなかくて、でも暗くて、怖いくて、ティタァヌス様を感じる。

 客間に置かれてる便箋もいつも通り。

 開けたいキモちとあけたいくない気もちがごちゃまぜ。

 でも、ティタァヌス様のご命令は絶対。ティタァヌス様の仰せのままに。


【家を持つべからず】


 そっか。え、でもだったらどうやって生きていくの?私は分からなかった。

 野宿?ホーームレス?公えんとかで?


助けて


 でも、やはりティタァヌス様の仰せのままに。私はこれに従わねばならない。

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