その3

~~3年目~~


 まだ生きている。"まだ"。

 私は何度も精神が壊れそうになっている。そして、それを助けてもらうよう誰かに訴えかけることですらもご命令により不可能になっている。

 なぜだろう?私はティタァヌスのご命令に逆らうことに大きな嫌悪を抱くようになってしまったようだ。こんなの投げ出して、今すぐにでも誰かに助けを求められたなら……。

 でも、私がまだ生きているのは、友のおかげだ。友のためにも、私は年記を描き続ける必要がある。


「かなり辛そうなお顔ですね……大丈夫、すぐ慣れますよ」いつもの彼女が笑顔でそう語る。私は腹が立ち、作り笑顔すら見せず、しかし最低限の礼儀として一礼だけしてから客間へと向かった。


 『ティタァヌス様の仰せのままに』。掛け軸を見て私は思う。なぜ私も、そちら側に行ってしまったのだろうか?

 好奇心?ああそうさ。私の純粋な興味が、私を壊そうと必死に動いてくれる。

 ご命令に従えと囁く。


【異性との交際をするべからず】


 良かった……。私には今、恋人が居ない。このご命令に人生を縛られるようになる日は来ないだろう!

 どうだティタァヌス!これが私だ!非リアが良い方向に働く日が来るとは思わなかったぞ!!!

 ……はぁ、私は1体どうなってしまうのだろうか?


~~4年目~~


 去年のご命令が私にとって完全に無関係だったことが原因か、私の精神のすり減りはあまり起こっていない。

 しかし、年々私はズキズキとした頭痛に悩まされているように感じる。頭の中に気持ちの悪い存在がいるような気がしてならない。

 あぁ、これがティタァヌスなのだろうか?信仰者とは、そういうものなのだろうか?

 いやだ、これ以上何かを禁止されるということが嫌だ。それでも、私は教会へと向かう。これは、もう生存本能だ。


 教会につくなり、私は急いでご命令を受け取るために客間へ向かった。あの紙切れ1枚で私の人生すらも決まってしまうのだ。

 

【交友関係を持つべからず】


 あぁ……なるほど。私は直感した。

 来年の年記で、私は確実に壊れているだろう。今まで、友と食べるラーメンが、友と遊ぶゲームが、友との何気ない会話が、私の崩壊を止めてくれていた。

 友を失った私が正気を保っている未来が見えない。


 私は絶望に打ちひしがれながら、震える腕を押さえつけ、電話をかけ始めていたのだ。

「ねぇ、悪いんだけど、もう縁切りたいんだ」


 察して欲しい。この年記の短さを。これが、私が感じている絶望だ。分かったか?

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