第7話「キミとの関係」

 駅から十分くらいの距離にある大型ボウリング場。


 俺やセンパイの家からもそこそこ近く、デパートに併設されている古いボウリング場なこともあってデパート側なら何度も来たことがある。


「キミの部活の後輩に、幼馴染、クラスメイト――の友達にそのカノジョっと。見事なくらい幅広いというかほぼ知らない人たちで構成されてるねぇ」


「二十人近くいますけど、学年もバラバラだし、俺も知ってる人は半分くらいですよ」


 既に料金の支払いは済ませ、今はみんなレーンにある座席でボウリングシューズを履いていたり、雑談をしていたりと各々ゲーム開始を待っている状態だ。


 ザッと辺りを見回すと知らない顔が多い。俺もセンパイも実のところは人見知りだ、平静を装っているが少なからず緊張している。


「アタシに至ってはキミを入れたら三人くらいしか知らないよ。っていうか、もしかして三年はアタシしかいない感じ?」


「一応、引退したうちの部活の先輩もいるからセンパイだけじゃないですよ。ただまぁ、こんな真冬の時期の高校三年生なんて普通は受験勉強に励んでいるものですからね」


「なんだよぉ、アタシが遊んでばかりみたいな発言だな」


「別にそういうわけではないですけど……。ちゃんとセンパイが勉強してるのは知ってますし」


「素直でよろしい」


「でも、まぁ。学年というより構成のほうが心配してたんですけどね。男女比も割と半々な感じで、俺とセンパイみたいな関係の人たちもチラホラいるみたいだから浮かなくて済みそうです……」


「その『俺とセンパイみたいな関係』――ってのは具体的にはどういう関係を指してるのかなぁ?」


「………………」


 自分で言っておいて、この人に付け入る隙を与えてしまったことに少し後悔をしている。


「キミはいつもそうやって面倒くさそうな顔をする」


「そういう顔にさせている人が悪いと思うんです」


 どうせ俺が答えたら答えたで、自分で照れたり反応に困ったりするくせに……。


「はぁ……。そうですね、俺とセンパイは夫婦みたいなものですね、夫婦」


「ふっ! ふっ!!」


 わかりやすく狼狽えるセンパイが少しだけ火照った顔をしている。


 たまには自分がからかわれる側になるのも悪くないだろう。


「まっ! キミとは夫婦になってないからね!! それにまだキミは結婚できないでしょ!!」


「ちょ、センパイ声が大きい……」


 明らかに周囲から生温かい視線がこちらに向けられている……。


 しまったな、やっぱり慣れない事はしないに限る……。

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