第4話「キミとのお風呂」
自宅に帰って夕飯を食べ、適当に時間を潰し、時計を見計らって行動を開始する。
俺とセンパイは普段からお風呂に入りながら携帯電話で音声通話をしているからだ。
センパイはどれだけ雑談する能力があるのか、常に俺と話していられるらしい。
気負いせずに無言でいられる関係が本当に仲の良い証だと聞くが、この場合はどうジャッジすればよいのだろうか……。
『バシャ! バシャ! バシャ!! バシャ!!』
「ちょっとセンパイ! うるさいですよ、お風呂ではしゃがないでください! もう十八歳でしょ!」
『なんだよケチかよー。アタシはキミよりもお姉さんなんだよ? もう結婚だってできるんだからね?』
「俺を置いて勝手に結婚しないでくださいよ……」
『待っててあげるから早くアタシに追いついてきなよ。それにいいじゃん、童心にかえるっていうのは重要なことだよ? バシャッ! バシャッ!』
「童心にかえるなら通話が終わってからにしてください、何のために通話してるんですか」
『そりゃあ、キミと楽しい時間を過ごしたいからだよ』
「それは――嬉しいですけど……」
突然恥ずかしいことを言われると言葉が詰まってしまう……。
『しかないにゃあ、じゃあもっと実のある話でもしようかねぇ』
ザバァーっという大きい水の動きとともに、カランカランと軽い音がする。多分湯船から出たのだろう。
『さて、問題です。アタシは今湯船から出ました、さてこれから何をするでしょう……か?』
「身体を洗うのは……湯船に入る前にもうしてたし……。なんだろ……?」
『正解はぁー!』
「あ、もう答え言うんだ」
『バァストアップゥ! エェクササイズゥでしたぁー!!』
「…………」
『……なんかリアクションしてよ!!』
どこかエコーがかった声からハッキリとした声になったあたり、携帯電話に近寄っているのだろう。
「いや、だって。ほら、センパイのは、何ていうか、ちょっと控えめな方じゃないですか」
『だからやってんのよ! オブラートに包もうとしても漏れ出てるからね! 粉薬サラサラと漏れちゃってるからね!?』
「いや、その、別に大きさなんてあまり重要じゃないというか……」
『ほら、男はみーんなそう言う! あ、いや――キミとしかこんな話したことないけど……』
「いや、そういう意味じゃなくて……」
お互いにどことなく声が小さくなっている。
『なんだよぉ! 今度はオブラートに包まずハッキリ言えよぉ!」
「……なんというか、俺がスキなのはセンパイの――であって、大きさとかそういうのはどうでもいいというか……」
『うるせぇ、バカーッ!! 少しはオブラートに包めよぉー! 漏れんなッ!! こっちが恥ずかしくなるだろぉー!!』
「うわっ、どっちにしても面倒くさいタイプだ、こいつ!」
『ホンッッット! キミってそういう所あるよねぇ。あーやだやだ、ぬるめのお湯に入ってたはずなのに何かあったまりすぎちゃったよ……』
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