第2話 高丘親王航海記

 また澁澤龍彦だ、次回は森博嗣先生。


 高丘新王航海記は、癖が強いファンタジーと思ってもらえればいい。

 あらすじは、高丘親王(実在)が天竺を目指し旅立つ。である、滅茶苦茶端折ればそんな話だ。

 漢字が多いことにお気づきだろうか。そうこの小説、アジアンファンタジーなのだ。

 澁澤龍彦はエッセイや翻訳が多く、小説は殆どない。いつも西洋の黒ミサやサラマンドラの話ばかりする澁澤龍彦が、小説を書いたのだかなりレアだ。


 澁澤龍彦の軽い語り口から小説の中身も軽く、中身は幻想的で美しい、割ったら中から出てくるアメジストの如きだ。

 澁澤龍彦が死の間際に書いた小説だから、主人公の高丘親王にジリジリと迫りくる死の影が不吉だが、やっぱり澁澤龍彦のこと、そこを恐ろしくて禍々しく描かない。むしろ自分の前世は天竺を目指した高丘親王だと確信しているかのようだ。


 博識な澁澤龍彦節が効いていて、澁澤龍彦の持論とエッセイの集大成とも言える。細かな所で、

「あ、あのエッセイだな」

 と思える作品である。

 当時、澁澤龍彦を知らなくても面白いファンタジー小説として楽しめる。昔の本ってなんか読みにくそう、と思わず読んでほしい、澁澤龍彦はプラスチックのように軽い文章で人を惹きつけてしまうのだ。

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