第6話  美味しいものは全世界共通だよねってお話


「いただきます!」


「なんだそれ?」


「ご飯を食べる前の挨拶みたいなものだよ。」


「変わった挨拶だな。」


 そんなことを言いながらくずきりを食べる。

 つるりとした食感に黒蜜の落ち着いた甘みが合わさりとても美味しい。


「こんなお菓子は食べたことがないな!食感がとてもいい。」


「すっげぇー!このかかってる黒蜜ってやつ美味しいな!」


「サクラが故郷から持ってきた食材で作ったのかい? 似たような食材があればパンと黒蜜を合わせてもいいね。」


 リードさんとネイアスくんはくずきりに舌鼓したつづみを打っていた。

 タリアさんは黒蜜がパン作りに活かせないか考えている。

 3人とも目を輝かせて食べてくれていたからよかった。


「確か、黒蜜は砂糖を煮詰めれば作れますよ。」


「生地に混ぜ込んだら美味しそうだな。」


「そんなに簡単に作れるものなんだね。」


「はい、くずきりも材料の植物を見つければ作れますよ。」


 くずきりは葛という植物の根をデンプンが多く含まれる冬に収穫して作る葛粉からできている。

 ただ、この世界には葛はないと思うから他の代わりになる植物を探さなくてはならない。

(葛は確かマメ科の植物だったから、豆をつける植物を探せばいいのかな…)


「サクラ、この黒蜜を使ったパンを売ってもいいかい?」


「いいですよ。タリアさんにはお世話になるので。」


 そうして、和菓子とこの世界のパンが合わさったパンが作られることとなった。

 おそらく黒糖パンのような味のパンになるはずだ。

 この店のパンには果物の入ったパンか砂糖をふりかけたパンしかなかったので楽しみだ。


「明日からパンを作る前に黒蜜の仕込みをお願いするよ。」


「はい! 他にも作ってみたい和菓子があるのでもし新しいパンが作れそうなら作ってみたいです!」


「あと、和菓子の材料になりそうな食材を探したいんですがどこかいいお店はありませんか?」


「それだったら、市場に行ってみたらどうだい?

あそこなら周りの国から来た行商人や森で収穫された食材を売りに来てる店がいっぱいあるよ。」


「ありがとうございます!行ってみますね。」


 無事くずきりを食べ終え食材を探すあてもついたところでパンの作り方を教えてもらうことになった。


「ほら、サクラこれを全部混ぜて捏ねるんだよ。」


「ふぎぎぎぎぎ…かっ固い…。」


 おおよそ女子高校生から出てはいけない声を出しながらパン生地をこねていく。


「これが終わったら発酵させるから少し休憩だよ。」


「頑張りますっ…。」


 タリアさんは慣れているのか軽々と生地を捏ねている。


 そんなこんなでパンの生地を作り、焼いたら完成だ。


 余っていた黒蜜を生地に混ぜ込んで焼いたパンは初めて作ったこともあり、香ばしい香りのまろやかな甘みがするとても美味しいパンになった。


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