出来損ないのカニ型ゴーレム

 レイナが斬られた……っ!?俺の頭の中が真っ白になる……。


「レイナ……、レイナ……っ!!」


 俺は足をもつれさせながら慌てて彼女の元へと走る……!


「く……、クロト……」


 そしてレイナの元へとたどり着くと、なぜかレイナは斬られていない……。


 その代わりレイナの身体から何かが落ちた……。


「ふえ……?」


 それはレイナが着ていた水着だった……。

 水着は一刀両断され、重力に従って地面へと落ちる……。


 すると、目の前に一糸まとわぬ姿になったレイナの姿があったっ!


「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー………っ!?な、なにこれーーー……っ!?」


 レイナは慌てて胸や股間など大事な所を手で隠す……!


 良く分からんが……、カニ、ナイスだ……っ!

 ……じゃなくて!


「レイナ!一先ず下がるぞっ!」


「きゃあ……っ!?」


俺はレイナを抱きかかえるとゴーレムから距離を取った。


「あ……、思い出した。あれは装備のみを破壊するカニ型ゴーレムだ……」


 すると、リリスは思い出したかのように手をポンと叩く。


 装備のみを破壊するカニ型ゴーレム……?なんだそりゃ……。


「リリス、あれは一体何なんだ……?」


「何ってあれはわた……じゃなくて、魔王様が作り上げた試作型ゴーレムだ。全てのものを斬り刻むと言うコンセプトで作られたのだが……」


「作られたが……、なんだ……?」


「装備しか斬れないという事が分かって廃棄されたんだ……。まさかこんな所に流れ着いていたとはな……っ!」


 リリスは悔しげに唇を噛み締めているが、対する俺は開いた口が塞がらなかった……。


 つまりあれは魔王軍が作り上げた失敗作って事か……?


 しかも、身につけているものだけというが、あんなのが訪れた人の水着を切り裂いて行くのではたしかに迷惑なことこの上ない。


 ビーチが封鎖られるのも納得だ。


 男からしてみれば女性の水着が切り裂かれあられもない姿になるのは喜ばしく思うものも少なからずいるだろうが、当人にしてみればたまったものではない。


 しかも、あれは女性だけでなく男にも襲いかかるのだろう、となれば、男もまた水着を切り裂かれあられもない姿とされてしまうわけだ。


 まあ、あんなのがいれば人も来ないよなぁ〜……。


「というか、リリス。あれはお前達の落ち度ならお前がアレを片付けたらどうだ?」


「いや〜……、それがだな。あれを作るのにも結構な金がかかっていてだな……。壊すのは流石に惜しいというか、なんというか……。出来るなら持って帰って改修をだな……」


 リリスは、はぐらかすように視線を他所へと向けているが、そもそもなんでただの一魔族のお前が金のことなんか気にしてるんだ……?


「良く分からんが、兎に角お前が壊せんのなら俺が壊すっ!ヘル・スパークっ!!」


「あぁあーーー……っ!?研究費用がーーー……っ!!」


 リリスの叫び声を無視するかのように魔法を唱えると、俺の手から生み出された闇の雷がカニ型ゴーレムへと襲いかかる……っ!


 そして、その直撃を受けたカニ型ゴーレムはコアが破壊されたのかその動きを止め、身体も崩壊したのだった。



 ◆◆◆



「わーいっ!海だーーっ!!」


 ゴーレムが倒れ、危機が無くなったビーチで新しい水着を着たレイナがはしゃぐっ!


 ちなみにレイナが着ているあの水着は俺が買いに行ったやつだ……。


 水着を切られ、裸では買いに行かれないということで俺が行かされたのだ……。


 サリアとリリスに行かせればいいという話なのではあるが、サリアは俺達がゴーレムと戦っている間にいつの間にか一人で海の、しかも沖合に泳いで行ってしまいた。


 どうりで姿が見えないと思った……。



 そして、一方のリリスはと言うとゴーレムの残骸の前でなぜか落ち込んでいる……。


 そういう訳で、店のスタッフから白い目で見られながらレイナの水着を買ってきたのだ……。

 何と言う屈辱だ……!


「ほら!クロトも一緒に泳ごうよっ!」


 精神的大ダメージを負っている俺にレイナが手を差し伸べてくる。


「そうだな……!」


 俺はその手を掴むと海での一時を楽しんだのだった。

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