村を襲った野盗
ジュノールへと向かう途中、小さな村が見えてきた。地図で確認すると、目的のジュノールはこの村の先にあるようだ。
俺達はひとまずこの村によることにしたのだが……。
「なんだこれは……っ!?」
俺達は村へとやって来ると思わず声を失った……っ!
目の前に広がっているのは何者かの襲撃を受けたのか、無惨にも破壊された建物や多くの人々の死体だった……。
「ひどい……、一体誰が……」
レイナも口を両手で覆い、青ざめた顔で亡くなった人達を見ていた。
「……兎に角、生存者を探すぞっ!」
「分かったのだっ!」
「ああっ!!」
俺達は村中を探し回り生存者を求めて走り回ったっ!
しかし……。
「……生きている人はいなかったわ」
「……こっちもなのだ」
「くそ……!一体誰がこんな事……っ!」
俺は怒りに任せて地面へと拳を打ち付けるが、ただ拳が痛むだけだった……。
「……私の魔法で誰がこの村を襲ったかくらいは分かる」
「本当か……っ!?」
リリスの言葉に俺は俯いていた顔を上げたっ!
もしかしたら魔族であるリリスの魔法でなら時間を戻すことさえもできるのかもしれない……っ!
「だが、言っておくが"分かるだけ"だ。そこに介入して事実を変えることは出来ない。それでも良ければだが、どうする……?」
「……分かった、頼む」
少し考えた結果リリスに頼むことにした。
起こった出来事は変えられない……。それを知り
「分かった……」
リリスは俺が聞いたこともない魔法を唱えると、目の前に村の人々を襲う奴らの姿が現れた!
そいつらは野盗だろうか、剣を片手に次々と笑いながら人々を殺していく……!
それこそ女だろうが子供だろうがお構いなしに手当たり次第に……!
しかもよく見ると野盗の中に見知った顔があった。
ニクスとマックスだ……っ!
二人もまた嬉々として人々を殺し、金を奪っていく……っ!
「止めろ……っ!ニクス!マックスやめろ……っ!やめるんだ……っ!!」
俺はそれを止めようと手を出すが、俺の手は二人の顔をすり抜けるだけで決して止める事が出来ない……っ!
「クロト……無駄なのだ……。これは幻影魔法の一種でここで起きたことを映像化しているに過ぎないのだ……」
「しかし……っ!」
サリアが俺の肩を掴んでくる……!
それを振りほどこうと後ろを向くと、そこには俺と同じく手を握りしめ怒りに打ち震えているサリアの姿が合った……。
「は……!はあっ!やあ……っ!!」
レイナは剣を振るい、幻影の野盗達を倒そうとするがその剣が決して奴らに届くことはない……。
「……これがここで起きた出来事だ」
「く……っ!」
まさか勇者と言われていたあいつらが野盗になっていたとは……!しかもなんの罪のない村人たちを殺したのも奴らだ……!
俺の中でどうしようもない怒りが込み上げてくる……っ!
「クロトお前に聞きたいのだが、なぜ人間というのはこうも残酷なんだ?」
「……お前ら魔族だって人を殺すだろっ!」
「確かにそうだ。だが私達魔族は力こそが全てな種族だが、ルールと言うものがある」
「ルール……、だと……?」
「そうだ。無抵抗なものは殺さない。強い相手を倒してこそ我ら魔族の誉れだ。無抵抗の、しかもこんな幼い子供まで殺すなどなんの自慢にもならない。恥以外の何者でもない。私たち魔族からみてもこの有り様は外道としか言いようがない」
外道か……、たしかにそうだな……。
「リリス、お前の言う通りだ……。人間は時に悪魔にもなる……。ならば俺もこの時ばかりは悪魔になろう……!」
「どういう事だ?」
「この村を襲った奴らを皆殺しにする……!抵抗しようがどうだろうが関係ない……っ!この人たちの仇は俺が取る……っ!!」
「クロト、あたしも行くわっ!」
「ボクも行くのだ……!こんなことをした奴らを見過ごせないのだ……っ!!」
レイナ……、サリア……。
「リリス、コイツラの居所をたどれるか……?」
「もちろんだ。そんな事造作もない」
「なら頼む……!」
俺達は村人たちを埋葬すると、彼らを襲ったニクスとマックスたちの所へと向かったのだった……っ!
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