魔族のリリス

「クロト、人が倒れているのだ」


「そうだな」


 夏の日差しが照りつける中、ジュノールの街へと向う街道を歩いていると、黒いロングヘアの一人の少女が倒れているのに気がついた。


 その少女はなぜか黒いビキニアーマーを身にまとい、熱中症にかかっているのか意識がない。


「クロト、大変だよ!助けてあげようよっ!」


「……そうだな」


 なぜビキニアーマーなのかが気にはなるが、このまま放置して死にましたとかなったら流石に夢見が悪い。

 俺達は抱えて日陰へと向かった。



「おい、しっかりしろ。大丈夫か?」


 俺は氷結魔法で少女の身体を冷やし、少しづつ水を飲ませながら声をかける。


「んぅ……、ここは……?」


「気が付いたか……?」


 少女は気がついたのか薄っすらと目を開けると俺と目があった。


「うわぁあ……っ!?なんだお前はっ!?私に何をする気だ……っ!?」


 すると、少女はものすごい速さで俺との距離を取った。


 コイツ、思ったより元気じゃん……。


「何って俺達はお前を助けたやったんだが……」


「お前はそこの日向で倒れていたのだ。」


「ねえ、大丈夫?具合は悪くない?」


 その少女は状況を理解したのか、すっくと立ち上がると仁王立ちをした。


「こほん……。大丈夫だ、まずは助けてくれたことに礼を言うぞ。私の名はリリスだっ!」


 軽く咳払いをすると、身長150センチくらいのその少女は腕組みをしながら豪快に笑っていた。、

 しかし、気になる点が一つある……。  胸がデカい。

 いわゆるロリ巨乳といったとこだ。


「思ったよりも元気そうで良かったのだ」


「で……?そのリリスはなんであんなところで倒れていたんだ……?」


「仕方ないではないか……、私は普段涼しい所にいたのだが、暇なので海へと繰り出そうと外に出たらメチャクチャ暑くて倒れたんだ……」


 ……間抜けかこいつは?


「それは大変だったねぇリリス……。ん……?これは……」


「こ……こら……!私を子供扱いするなっ!それと頭も撫でるなっ!!」


 嫌がるリリスの頭を撫でるレイナだったが、何かに気がついたようでその手が止まった。


「クロト見て、リリス頭に角が生えてる……!」


 レイナの言う通り、髪で少し隠れているが、リリスという少女の頭の両サイドに角が一本づつ生えている。


 おもちゃかと思ったが、そうでもなさそうだ。


「ギク……っ!」


「クロト凄いよ……!この子の頭に角が生えてる……っ!!魔族!きっと魔族だよ……っ!!」


「レイナ離れろっ!!」


 魔族と聞いて俺とサリアは咄嗟に臨戦態勢へと入った!


 なぜこんな所に魔族が……っ!? 


「待て待て待て……っ!落ち着け……っ!たしかに私は魔族だが争いに来たわけではない……っ!」


「どういう事だ……?」


「それはわた……じゃなくて、魔王様が暑いからと夏季休暇を出されたのだっ!だから私も遊びに来たんだっ!お前達は魔族とは言え無抵抗な者へと襲いかかる気か……っ!?人間とはそんなに野蛮なのか……っ!?」


 夏季休暇……。魔族には夏季休暇があるのか……。


 しかしふむ……、確かに無抵抗な者を襲うのは気が引けるな……。


「分かった……。そちらが何もしないというのなら俺達も手を出さないようにしよう」


「助かる」


「あたしはクロトの言うことに従うよ」


「クロトがそう言うのならボクも従うけど、それでいいのだ?」


「俺達は野盗じゃない。魔族とは言え無抵抗な者をいきなり襲うのは外道のすることだ」


「……ボクはクロトのことを外道だと思っていたのだ」


 やかましいっ!!


 まあ、確かに最初にあった時は生きているロープに縛られ、天井に吊るされたサリアを放置しようとしていたり、ロープに縛られたまま罠の方に投げ込もうとしていたりした記憶もあるが、決して俺は外道ではない……っ!


「とりあえず、自己紹介をしておこう。俺の名はクロト。旅の魔道士だ」


「あたしはレイナ。見ての通り狼の半獣人の剣士よ」


「ボクはダークエルフのサリア、シーフなのだ」


「クロトにレイナにサリアか。分かった。さっきも言ったが私はリリスだ」


「さて、リリス。俺達はこれからジュノールという海岸沿いの街に行く途中だが、おまえはどうする?」


「海に行くのかっ!なら私も行くぞ!」


 こうして俺達は魔族のリリスと共にジュノールへと向かったのだった。

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