その頃のニクス(その2)

 デナンの街を出たニクス達は、別の町で足止めをされていた。


 そこはデナンの街と比べると遥かに小さな町で、村に毛が生えた程度の規模なのだが、その町の酒場にニクスとマックスの姿が合った。


「なあ、ニクスこれからどうする……?」


 マックスはニクスに声を掛けるが返事はない。


 それもその筈、ここにはサラサとサナの姿がないのだ。


 サラサはロックリザードの怪我が悪化し、化膿をし始めていたため、ここに来る途中に寄った町の病院に入院している。


 サナはその付添で残ったため、ここにはニクスとマックスの二人しかしない。


「なあニクス、俺達ここで油を売ってていいのかよ……?サラサの病院代を稼がないといけないんだろ?」


「うるせえっ!そんな事分かってんだよっ!!」


 マックスの声が煩わしく感じたのか、当たるように酒場のテーブルを叩きつける!


 ニクス達はサラサを病院へと入院させたはいいが、金がないのだ……。


 理由としては先日の貴族の依頼をし、依頼主の娘達と使用人を見殺しにしたことで多額の慰謝料を払う事となり、さらに"勇者特権"の廃止のせいで収入も格段に減り、街や貴族からの収入はほぼ0となっていた。


 その為サラサの病院代は金貸しから金を借りて入院させているのだ。


「ニクス!そんな俺に当たっても仕方ないだろっ!?それに期日までに金を返さないとサラサとサナは売られちまうんだぞっ!?」


 もし払えなければサラサとサナは奴隷行き……。

 それが金貸しから金を借りた条件だった。


「くそ……!なんでこんな事になっちまったんだ……っ!クロトだ……!あいつがいればこんな事にはならなかったんだ……っ!」


「クロトはお前が追い出そうって言い出したんだろっ!?」


「お前だって賛同してただろっ!?」


「何言ってやがるっ!リーダーはニクスお前だろっ!?全ての責任はリーダーのお前にあるんだよっ!依頼を失敗したのも、サラサがああなったのも、借金を背負ったのだって全てニクスの責任だっ!!」


「なんだとっ!?じゃあマックスお前には責任がないっていうのかっ!?」


「無いねっ!俺はお前の指示に従ったまでだっ!この際だから言わせてもらうが俺はお前が大嫌いだったんだっ!!」


「それはこっちのセリフだっ!!一々俺の指図に口を挟みやがって……っ!リーダー俺だっ!お前は黙って俺の言う通りにすればいいんだよっ!!」


「はっ!本当にお前は人を見下すことしかできないクズだな!お前の言うことを聞けばいいだと?その結果がこれだろっ!!」


「なんだと貴様……っ!」


「やるかこのクソ勇者……っ!!」


 二人はお互いの胸ぐらをつかみ合い、まさに一触即発の事態へと差し迫っていた!


「おいテメェらっ!他の客の迷惑だっ!とっとと出ていきやがれっ!!」


 しかし、酒場のマスターから追い出され、この町にも居辛くなった二人はトボトボとどこかへと去っていったのだった……。

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