面倒なものはさっさと倒したい
リビングメイル……。それは鎧に呪印を刻むことで低級霊を憑依させ使役すると言う、鋼鉄の番兵だ。
その力は凄まじく、並の冒険者や兵士ではまず太刀打ちが出来ない。
しかも、呪印に自身の血を数滴垂らすだけで忠実な下僕と化し、給与や食事などの経費も要らず、さらには文句一つ言わずに与えた仕事を忠実にこなすため、場合によってはかなり役に立つ。
一見便利そうに見えるが、しかしながら欠点もあり、その最たるものが融通が利かない事。
言われたとおりにしか動かないのだ。
例えるなら、「何人もここを通すな!」と言おうものなら不審者のみならず、味方どころか最悪使役している本人すら一歩も通さず、全力で阻んでくる。
そのため、お偉いさんの護衛や、屋敷の警備などには圧倒的に向かず、向くとすれば世に出したくない遺跡などの警備をさせる事くらいだろう。
そのリビングメイルが目の前に数体が剣を抜き迫ってくる……っ!
「はあっ!」
「レイナちょっと待てっ!」
「ちょっと、何よクロト……?」
今にもリビングメイルへと斬りかかろうとするレイナを俺は止めた。
「こんなのをまともに相手をするだけ時間の無駄だ。ここは俺に任せてお前は下がっていろ」
「分かったわ」
「ほお、ならここはクロトのお手並み拝見と行くのだ。」
レイナが俺の後ろで腕組みをしているサリアのところまで下がったのを確認すると、俺は魔法を唱え始めた。
「くらえ!ブラックホール!」
俺は指先に豆粒大の黒い塊を発生させ、それをリビングメイル達のど真ん中へと放り込むと、豆粒よりも少し大きくなったブラックホールがリビングメイル達全てを吸い込むっ!
そして、リビングメイル達を吸い込み終わるとブラックホールは消失した。
ブラックホール……、それは闇魔法の最強クラスの魔法で全ての物を吸い込む魔法だ。
ただ、扱いが難しく発生させるサイズを間違えると自分ごと吸い込まれてしまうという危険もある禁忌魔法の一つなのだが、一応俺は使えたする。
「凄い……、全部消えちゃった……。」
「これは驚いたのだ……。」
「それじゃあ、行くぞ。」
ブラックホールを見て呆気にとられていた二人へと声をかけると、俺達は先へと進んだのだった。
◆◆◆
リビングメイル達を倒し、さらに奥へと進むと一つの部屋へとたどり着いた。
その部屋は魔力で明かりが灯されているのか、ランタンがなくても十分に部屋の中を見渡せる。
部屋のど真ん中には祭殿のようなものが立っており、そこには何かの本のようなものが置かれていた。
「ねえ、クロト……」
「ああ、あれが目的の魔導書かもしれないな」
レイナの問に頷くと、俺達はその魔導書が置かれてある祭壇へと向かった。
その魔導書には「大地の書」と書かれており、中をざっと見てみると、何かを召喚するための魔法陣と召喚呪文が書かれていた。
なんだこの魔導書は……?
「なあ、クロト……。前の方にこの本に書かれている魔法陣と同じものが描かれているのだ……」
サリアの声に俺は前の方を見てみると、祭壇から先の方にこの魔導書に書かれている魔法陣と全く同じ物が床に描かれていたのだったっ!
「ふふふふ……、よく見つけてくれたね……。感謝するよ」
と、その時後ろから何者かの声が聞こえて来たのだったっ!!
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