レイナはクロトを巻き込みたい
レイナと何度にも渡る行為を終えたあと、何者かが俺の腕をぎゅっと掴んで来た
……。
誰だと思ったが、よく考えたらここにいるのは俺とレイナだけだ。
「なんだ、レイナ?何か用か……?」
「あのさ……、あたしと何度もヤッたよね……?」
「そうだな、避妊魔法はかけてあるが……。それがどうした?」
「あたし初めてじゃないにしろ、何度もされてたくさん中に出されたんだから、今度はクロトがあたしの要望を聞く番だと思うわけよ!」
「ま……、まあ……そうかもな……」
……なんだか雲行きが怪しくなってきたな。
「まあ、避妊魔法をかけてくれているから、結婚しろとまでは言わないけど、せめてあたしが受けている依頼を手伝ってくれない?」
レイナは俺へと詰め寄ってくる……。
うぐ……!確かにあれだけヤッておいて知りませんとは流石に言えない……。
どうやらレイナのほうが一枚上手だったようだ。
「わ、分かったよ……」
俺はため息を付きながらもレイナに協力する事となった。
どうやら結果的に自ら面倒事に首を突っ込んでしまったようだ。
◆◆◆
「それで、次はどこに行くんだ?」
もう日が暮れてきていたため、洞穴の中で俺は調理をしながらレイナに聞いてみた。
料理は一人で旅をする期間が長かったため、何気に得意だったりする。
一緒に付いて来てくれはいいが、せめてどこに行くのかくらいは教えてほしい。
「次はアドラの街に行って、このオーブを依頼人に渡すのよ」
「そうすれば依頼達成って事か?」
「まさか。他にも頼まれているものがあるわ」
「……どのくらいあるのかは知らんが、それを一人でこなすつもりだったのか?」
「いや〜、最初はどうしようかと思ったけど、あたしの身体で思わぬ協力者が手に入るとは思わなかったわ♡」
……なんだか俺が逆に嵌められたような気がするのは気のせいだろうか?
「ところで、レイナは冒険者か何かか?」
「まあ、そんなところだね。出身はアドラの街なんだよ。クロトはどこから来たの?」
「俺か……?俺はここから遠く離れたアンクという小さな町の出身だ」
「アンク……?聞いたことない町ね。その町から一人で旅をしているの?」
「いや、最初は勇者パーティーというものにいた。結局は邪魔だからと追い出されたんだけどな」
「そうなんだ……。勇者パーティーってどんなの?」
「簡単に言うと魔王を倒すためのパーティーだ」
「へぇ〜、それは凄そうだね」
「そうでもないさ、結局のところ、最終的には魔王を倒さないといけないんだ。そんなの面倒なだけだ」
「ふぅ〜ん……」
レイナは勇者パーティーの話にはあまり興味が無いのか、俺が作っている料理へと視線が注がれていた。
料理はニクス達と旅をしていた頃から俺が作っていたため、何気に得意だったりする。
まあ、俺が勇者パーティーを抜けたのには他にも理由はある。
それは国が敷いている「勇者特権」と言うやつだ。
簡単に言うと、勇者のために街は金を出せ、民は勇者が家へと押し入り何かを盗んでいっても文句を言うな。
と、結局は野盗まがいな連中を国が守っているようなものだ。
そんなものに嫌気が指していたのも事実だ。
「そして今は、自由気ままに旅をする予定だったというわけだ。ほら、出来たぞ」
俺は作っていたスープを器に入れるとレイナへと手渡す。
「クロトはもしかして一人旅のほうがよかった?」
「ん……?いや、そうでもないさ。やはりこうやって誰かと食事をするのはいいものだ」
不安げな顔を浮かべるレイナに対し、俺はウインクで返すと自分で作った食事を味わうことにした。
味の方は我ながらなかなか美味かった。
◆◆◆
翌日、洞穴を出た俺たちは森の街道へと戻り、レイナが言っていたアドラの街へと目指していた。
この日も昨日同様に天気が良く、木々の隙間から木漏れ日が差していた。
時期的にも暑くもなく寒くもないため旅をするには丁度いい気候だろう。
そんな中、背伸びをしているレイナの腰に差してある剣へと目がいった。
「そういえば、レイナの剣の腕前ってどんなものなんだ?」
「あたし?自慢じゃないけど、こう見えてあたしは結構強いよ!」
「ほう、強いんなら昨日も自分で野盗を倒せばよかったんじゃないのか?」
「それはほら、折角男が通りかかったんだし、少しは守ってもらいたいな〜って言う乙女心って奴よっ!」
……そんな物なのだろうか?乙女心とらはよくわからんな。
「それより、クロトも剣を差しているじゃない。あなたも剣術が使えるの?」
今度は反対にレイナが俺の剣を見つめてきた。
「それなりにはな……。魔導師と言えど、接近させると不利だからな。ある程度は使えるようにはしている」
「へえ……。ならさ……、あたしと勝負してみない?」
「勝負……?」
「そ、共に旅をするうえでクロトもあたしの剣の腕前くらいは知っておきたいでしょ?あたしもクロトの剣の腕前くらいは知っておきたいのよ」
「確かににそうかもな」
いつまでレイナと旅を続けるのかは分からないが、ある程度は知っておけば、敵との戦い方が組みやすいかもしれない。
「もし、あたしに勝てたら抱くなりなんなり好きにしたらいいわ」
「やけに自信たっぷりだな」
「剣士が剣の腕前で魔導士に負けるはず無いでしょっ!?」
レイナは剣を抜いたと思うと、すぐに猛スピードで突っ込んできたっ!
早い……っ!
「はあっ!」
「く……っ!」
レイナを一撃を俺は抜いた剣で受け止めるっ!
その一撃は半獣人とは言え、そこはやはり獣人。かなり重たい一撃だっ!その衝撃で腕がビリビリと痺れる……っ!
狼の獣人というだけあり、かなり素早さが高いようだ……!
レイナのあの自信もこのスピードとパワーに裏打ちされたものなのだろう。
「今の一撃よく防げたね!並みの相手なら今ので勝てたのに、クロトがそれなりにはな剣を扱えるというのは嘘じゃないみたいだね!でも、次で決めるよっ!!」
レイナはそう言うと残像を残しながら姿を眩ませた。
周囲からはレイナの声こそするが姿が見えない。
残念ながら俺の目ではレイナの動きを捉えることはかなり難しい。
こうやって相手を翻弄し、隙をついて一気に仕留めるのが彼女の戦い方なのかもしれない。
だが、こちらは魔導士。なにもまともにやり合ってやる必要はない。
俺は周囲の様子を伺いながら呪文を唱え始めた……。そして……。
「
俺は地面へと手を付くと魔法を発動させた!
グラビティネット、これは任意の範囲に高重力を発生させ、掛かった相手を地面へとへばり付けるという、闇魔法の一つだ。
俺はこれを自分の周囲に、しかも広範囲に展開させた。
これで様子を見ておけば勝手にレイナが引っ掛かってくれることだろう。
「へぶし……っ!」
待つこと少し、俺へと襲いかかってきたレイナが予想通りグラビティネットにかかり、地面へとへばり付いていた。
「レイナ、勝負あったな」
俺はレイナへと剣を突きつける。
確かに剣術の腕前だけならどう足掻いてもレイナには勝てないだろう。
だが、俺は"魔道士"だ。何も正々堂々とバカ正直に剣で戦ってやる必要性はない。
「おにょれ……!卑怯な……っ!」
「魔法は禁止だとは言ってないだろ?魔導士が素直に剣だけで戦うと思ったのか?それより、今レイナの体には通常の五倍の重力が掛かっている。早く降参しないとペチャンコになるぞ?」
「ま……、参りました……」
レイナが素直に降参したため、おれはグラビティネットを解除した。
「それにしても、やっぱり魔法は卑怯だと思うっ!」
勝負がついたあと、レイナは頬を膨らませて何度も文句を言っていた。
「悪かったって、後で念入りにマッサージしてやるから。だが、レイナのスピードには驚いた。あのスピードで何度も攻められていたら俺は負けていただろうな」
「え……?そ、そうかなぁ〜……」
俺がレイナのスピードを褒めると、レイナはデレデレとしながら尻尾をブンブンと振っていた。
あれ……?コイツってもしかして意外とチョロい……?
俺の中でそんな疑惑が浮かび上がったのだった。
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