第25話
「正吾様! あの集団の中に、魔族の"将"がいるはずです。その魔族を倒せば、この戦いは私たちが勝ちます!!」
「おう! 分かったぜ」
正吾は【疾走】を使い、さらに速度を上げる。
向かってくるゴブリンの首を一瞬で
オーガの腹を突き刺し、抜いた勢いで後ろにいたリザードマンをぶった斬る。足を踏み込み、全力で剣を薙ぐと、ゴブリン三匹が跳ね飛んでいく。
「だああああああ!!」
【爆炎操作】で剣に炎を灯し、【空牙】を放つ。炎の斬撃が宙を舞い、次々に敵を斬り倒していった。
正吾の進撃は止まらず、三分で百体以上の魔族が屍と化す。
エリゼも負けてはいない。
風を纏った剣が魔族たちを斬り裂いていく。その速度は正吾を上回っていた。あっと言う間に二十体以上の魔族を切り裂き、風の刃で遠くの敵を斬っていく。
さらに二つの竜巻を巻き起こし、ワーウルフやオーガを空中に吹き飛ばした。
閃光のように大地を駆け巡り、魔族を斬りまくる。
二人は五分とかからず、五百以上の敵を駆逐した。ニーズヘッグも灼熱の炎を吐き続け、百体を超える魔族を焼き尽くす。
それでもまだ、敵の総数は3400はいる。正吾は顔をしかめた。
――くそっ! 敵の数が多すぎる。このままじゃ、魔力と体力が尽きちまう!
その時、魔族の軍勢の先に、馬に乗った竜人が見えた。明らかに他の魔族とは雰囲気が違う。ヤツがこの軍の"将"か!
「エリゼ、援護を頼む!」
竜人との距離は三十メートルはある。一人で突破するのはなかなかキツい。ゴブリンを切り伏せていたエリゼは、こちらに顔を向け、「はい!」と返事をする。
高速で剣を振り、いくつもの"風の刃"を生み出す。
正吾の周囲にいるオーガやワーウルフを斬り裂き、進むべき道を切り開く。正吾は駆け出した。
行く手を阻むのはオークの集団。正吾は剣に【氷結操作】を使って冷気を流す。
一気に踏み込み、剣を振るった。オークたちは正吾の動きについていけない。次々に体を斬られ、そこから凍り始める。
冷気の剣で斬られたオークは動けなくなり、バタバタと倒れていった。
そんなオークを飛び越えて竜人に迫ると、槍を持ったリザードマンが立ちはだかる。正吾はスピードを落とさず、【跳躍】のスキルを使って飛び上がった。さらに【空中歩法】のスキルも発動し、竜人の元まで空を駆ける。
横から赤いドラゴンが飛んできたが、正吾が怯むことはない。
冷気を宿した剣で【空牙】を放った。
氷結の斬撃はドラゴンの頭に当たり、血が噴き出す。そのあと、傷口はピキピキと凍り始め、ドラゴンは落下した。
正吾は空中を蹴り、剣の切っ先を竜人に向ける。
「喰らいやがれ!!」
竜人は持っていた槍で防ごうとするも、正吾のほうが速かった。剣は竜人の腹部を貫き、馬から叩き落とす。
驚いた馬は駆け出し、地面に倒れた正吾と竜人は同時に立ち上がる。槍と剣が交錯してぶつかり合うと、竜人は顔をしかめる。
傷口が凍り始めているのだ。
「貴様……何者だ!?」
怒りを込めた声で話す竜人。正吾は槍を弾き飛ばし、剣を構え直す。
一歩を踏み込み、剣を振り下ろした。竜人はガードしようとするも、力負けして槍が下がってしまう。剣は竜人の頭部に直撃した。
血が噴き出し、後ろに下がった竜人。正吾は追撃して止めを刺そうとする。
次の瞬間――横から大きな影が飛び出してきた。
「なにっ!?」
正吾は後ろに飛び退き、相手の攻撃をかわす。
巨大な剣は地面に食い込んでいた。見れば、そこにいたのは巨躯の魔族。額から二本の角を伸ばし、全身の皮膚は赤い。
「会社にいる時に襲ってきた魔族に似てるな」
かなり強そうな魔族に二の足を踏んでいると、今度は恐ろしい速さで迫ってくる者がいた。長い耳をしたウサギのような魔族。
だが、首に紫のスカーフを巻き、二足歩行で向かってくる。
まるで人間のようだ。両手に持った二本のナイフで斬りつけてきた。
正吾はその攻撃を剣でいなし、剣を横に薙いで斬りかかる。
うさぎの魔族は高く跳躍して剣をかわし、クルクル回転して着地する。
赤い鬼とうさぎ人間。明らかに他の魔族と雰囲気が違う。なんなんだ? こいつら!?
「正吾様! そいつらはきっと"将"の魔族です。気をつけて下さい!」
エリゼがゴブリンを斬り捨てながら叫んでくる。
「なに!? こいつらも?」
リーダーは一体じゃなかったのか、と正吾は臍を噛む。周りを魔族に囲まれ、その上、強い魔族三体の相手はさすがにキツい。
そう思っていると、上空からなにかが近づいて来た。
『なんだ。また手をこまねいているのか。情けない従者だ』
「親父!」
空から飛んできたのはニーズヘッグだった。
ふぅーと息を吸い込み、炎を吐き出す。うさぎの魔族にまともに当たり、轟々と燃え上がる。うさぎは地面に倒れ込み、悶えながらゴロゴロと転がっていた。
正吾はその隙を見逃さない。倒れたうさぎを蹴り上げ、十メートル以上吹っ飛ばす。
唸る赤い鬼が剣を振り上げ、そのまま切りかかってきた。正吾は剣をかわし、返す剣で相手の膝に斬り込む。
炎を灯した剣は爆発し、相手の足を破壊した。そのまま剣を引き、赤鬼の腹に突き刺す。唸り声を上げた赤鬼を無視し、炎を流し込んで爆発させる。
赤鬼は口から煙を吐き、ゆっくりと倒れる。正吾は剣を引き抜き、体を一回転させて竜人の前に踏み込む。
薙いだ剣は竜人の胴に入り、そのまま上半身と下半身を分断した。
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