『あなたのパワーソングを教えて』

八幡ヒビキ

『めぐりあい』あなたのパワーソングを教えて

『めぐりあい』歌・作曲 井上大輔 作詞 井荻麟、売野雅勇


 年齢がバレますね。


 機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙そら編の主題歌です。1982年公開なので、もう40年以上前の曲になります。


 もちろん直撃世代として大好きな曲でしたし、何度も何度も聞きました。しかし、パワーソングというほどではありませんでした。


 パワーソングというなら、夢戦士ウイングマンのエンディング『WING LOVE』と『元気爆発ガンバルガー』(タイトルと曲名同じ)、『愛は元気です』(アニソンだと最近知りました)、などでしたが、いざ、榊琉那@屋根の上の猫部様の企画を見て考えたとき、自分でそのテーマで書けるほど重みをもった曲は『めぐりあい』しかありませんでした。


 私は小学生の時に機動戦士ガンダムに出会って以来、ガチガチのガノタ(ガンダムオタクの略)でした。正確には宇宙世紀なんですが、その全てを網羅せずにはいられませんでした。どれくらいかというと全てのMSの性能諸元をそらで言えるくらいでした。そう、ガノタであることに燃え尽きるまでは――


 燃え尽きるまで30年間もガンダムに夢中でした。初代ガンダムの答えが欲しかったんです。初代ガンダムはニュータイプでもわかり合えなくて、でも、それでも一縷の希望を未来に抱いて、みんなのもとに帰る。それで良かったけれど、Vガンダムではニュータイプの力でも幸せにはなれませんでした。それでも、ずっと探し続けていたんです。あらゆる“ガンダム”と名付けられたものの中に。だってニュータイプみたいな共感能力は、現実にはないではないですか。ニュータイプですら人類を幸せにできない。なら、現実を生きる僕らはどうすればいいんだ――せめてガンダムの中に希望を見い出したかったのです。


 しかしあることがあり、ガンダムに対し、燃え尽きてしまいました。ある意味、ガンダムというものに満足したのです。とある1コンテンツから卒業した、とも言えます。思い出にできたのです。長いですね……30年。私はそれを自分が自分自身にかけた呪いだと周囲に話をしていました。答えは1つのコンテンツではなくても、自分で見つけられるものでもあるのですから、ガンダムにこだわる必要はなかったのです。燃え尽きてそれが初めて客観的に理解しました。でも、それまではガンダムの中の答えにこだわっていたのです。なので、視界を狭めることを呪いだと表現したのです。


 10年前の私は。


 しかし、それすらも視界が狭かったことに気がつきました。昨年のことです。


 25年ほど放置していたギターを何故か取り出して、練習を始めました。まだまだ初心者ですが、基本的なコードを使ったものであれば、弾き語りできるようになりました。


 そのコード譜が公開されている中に、『めぐりあい』があったのです。


 もちろん、耳馴染みのあるアニソンです。コードで弾き語りするにはとても適していますし、コード進行もさほど難しくはありません。


 何度も何度も練習しました。


 意外と早く弾けるようになりました。今では十八番の1曲ですが、お話はそこではありません。自ら歌うことで初めて気がついたことがあったのです。


 作詞した井荻麟氏は監督の富野由悠季氏であることは、私世代のオタクなら誰でも知っていることですが、富野由悠季氏は自らの作品の主題歌の大半を作詞されています。凄い才能ですね。


 その井荻麟=富野由悠季のメッセージが『めぐりあい』にはこれでもかとストレートに込められていたのが、自分で歌って、自分の声で聞いて、そしてギターを奏でて、初めて気がついたのです。


 自然と涙が流れました。


 自分はこの40年間、どこに答えを探していたんだろう――と。


 機動戦士ガンダムの答えはその中に用意されていたのです。


 詞を書くと著作権に引っかかってしまうので書けないのが残念です。


 主題歌に込められたメッセージが作品のテーマだなんてこと、普通にあるわけです。でも、気がつかなかったんですね。延々。呪いも何も、最初から自分の視界が狭かっただけなのです。


 アホだなあ、と今なら笑えます。


 40年経って、ようやく本当にガンダムを見つけました。

 

 それが『めぐりあい』


 私のパワーソングになりました。

 

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『あなたのパワーソングを教えて』 八幡ヒビキ @vainakaripapa

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