永遠の約束を
真っ暗な道を通り抜けた先に僕たちの思い出の場所がある。
一人で行くのは1年ぶりだろうか。
いつもは凜々ちゃんと2人でこの道を通っていた。
今日は一人で来たから少し怖かった。
ほんとはここで消え去りたい。
どうせ帰ったら親に怒られるだけだし。
凜々ちゃんは悲しい顔をするだけだと思うし。
嬉しかったよ。凜々ちゃんと仲良くなれて。
こんな変な僕でもずっと仲良くしてくれて。
不思議だよ。
生涯を孤独で過ごす人生になると思っていたのに。
はぁ……。天使すぎるよ。
なんで僕はこんなにも何も出来ないんだ。
元はと言えば親の喧嘩を止められなかった僕のせいか。
親に僕への興味を持たせようと努力出来なかったせいか。
それにあの子に正直な言葉を伝えれないのが辛い。
もう辛いよ。
なんで僕は強い気持ちを持っていても言えないの。
だから。
だから僕はこんな弱い人間ままなんだ。
またあの子の顔を見たら離れるのが辛くなるよ……。
だからずっとこのままでいたい。
でもそんな未来は来ない事が確定した。
……。
それか……もう……。
「死ねれたらいいのに。」
「ひろとおー!死ぬなー!!!」
「えっ……。りり……?」
暗いのにここからでも分かるほど全速力で走る凜々ちゃんだ。
でも僕の声が聞こえたのだろうか。
そんなはずは……。
「死ぬな!死ぬな死ぬな死ぬな!ひろと……!」
「ま、待って……?なんで僕が死ぬって……。」
「だって1年前にも同じ事があったじゃん!そん時、ひろと、死にたがってたじゃん!」
「え、ま、まぁね……。」
「わたしは!あんたの……気持ち……全部!分かってんだからね……!」
「凜々ちゃん……。」
凜々ちゃんが珍しく泣き崩れている。こんな事初めてだ。
今まで辛い事があってここに一緒に来た時も、凜々ちゃんがこんな事になるのは1度も無かった。
「引越し決まったのいつ……?神奈川なんて一体どうやって行くの……。」
「ごめんね……。引越しするのは去年の12月にお母さんから聞いたんだ。」
「去年……?」
「僕さ……。ほんとにごめんね……。凜々ちゃんにこの事を言ったらどんな事を言われるか不安で、何も言えなかったんだ。」
「……。」
「ねえ。凜々ちゃ……!」
「私だって辛いんだよ。広斗だって辛いでしょ。ほんとは毎日、広斗と話さないと気が済まないくらいなんだよ。」
凜々ちゃんは急に僕に抱きついてそう言った。
びっくり……だよ。
「凜々ちゃん、ごめん……。」
「でも広斗悪くない。」
「え?僕はとっても悪い人間だよ……。弱い……人間だよ……。」
「広斗はどんな時も約束を守る人じゃん……!」
「約束……。」
「去年立てた約束……!広斗は忘れずに居てくれたんでしょ?」
「うん……。辛いから……。」
「この場所に来てくれて良かったよ……!とっても安心した!」
「良かった……。僕も凜々ちゃんがここに来てくれて嬉しいよ。」
「おっ!ふふーん。君のそういうところが好きだな〜!」
「……え?今なんて言った?」
今絶対好きって言ったよね。聞き間違いではないはず。
絶対に言った。絶対に言った……?
え……。僕……。
「え、あ、、あぁ〜」
「あ!広斗!!星見ようー!ね!」
焦ったような声が聞こえたけど、焦っているのは僕も同じだよ。
「ほ、星ね。そうだね……!」
「座って座って!」
「よいしょ。」
「え、よいしょ?」
「ん!?なんでもないよ…!」
「おじいちゃん〜」
「ちがーう!」
すっかり悲しみが消えた気がした。
僕だけじゃなく、凜々ちゃんもだ。
「今日も星がいっぱい見えるね〜」
「そうだね。1年前から変わらず、ずっと綺麗だよ。」
今日も晴天。星空は僕たちを見守っている。
一人で見る星空よりも安心出来る人と一緒に見る星空はとても美しい。
なんでだろうね。
「ねえねえ!」
「なに?」
「私って星で例えると何の星だと思うー?」
「え、星……?」
「うん!星!」
「そりゃー、一番星だよ。」
「何それ〜!それは盛りすぎだよー?」
「そんな事ないよ。こんなに周りが暗いのにはっきり見えるほど輝いてるから。」
「え……!?」
「え?」
「ぷっ……!あ〜抑えられない!」
「え?なんだよ……!」
「ちょっ!ちょい待ってええ〜……!」
凜々ちゃんは笑いを抑えられないようだ。
そんなにおかしい事なんて言ったつもりはないんだけど。
「広斗さ〜。いつからそんなイケメンになったのー?急だったから笑っちゃったけど……!」
「な、なんだよ……!たまたまだよ。こんなの……!」
「そうなのー?ほんと意外だったよ〜」
「こ、困らせるなって……。」
「ごめんごめん!」
ん。あ、そっか。
あ、恥ず……。
めっちゃ恥ずいじゃん。さっきの言葉……。
何がはっきり見えるほど輝いてるだよ。
本当のこと言え……てた……のか。
ここである事に気づいた。
僕が凜々ちゃんに対して、本当に伝えたい事を言えたこと。
いつの間にか僕はあの言葉を口にしていた。
「あれ、広斗。大丈夫?」
「本当のこと……。」
「ん?本当のこと?」
「え!いや〜なんでもない。」
「そう言ってまたなんか隠すんですかー?」
「ち、違うよ。」
「じゃあ言ってみて?星さんたちも君の事見てるよ?」
「星さんたちって……。余計に恥ずいじゃん……!」
「多分さ〜、私に言いたいことだよね?」
「え……。うん。」
「おっ!まじ!?」
「え、あっ。」
「じゃあ星空に向かって言ってみて!」
「なんで星空?」
「私を見ながらだったら絶対緊張して何にも言えないでしょ。」
「まぁ、確かに。」
星空に向かってか。
何でも知ってる星空さん。
僕はこれから、どうなるかは分かりません。
でも数多の星々は知っていると思います。
今までの事も、これからの事も。
だから僕はそれを信じて、言いたいことを言います。
「星に向かって……ね。」
「うん!」
僕は立ち上がった。
少しでも気が楽になれるようにと願い、僕は言った。
「……。好きだあああああーーー!!!!」
どうだ……!これが僕の力だ。
僕だって弱くないから。弱い自分に負けたくないから。
だから……。
「わたしもおおおおおーーー!!!」
「凜々……?」
凜々ちゃんが僕の横で星空に向かって大声で叫んだ。
「えへへ〜。私だって負けたくないから。」
「負けたくない……?」
「いい声出てたね。好きだよ。私も。」
きっと何年も前から分かっていた。
私たちを見守る星はこうなる事を。
信じてよかった。
本当に良かった。
君と過ごしたこの瞬間は、まるで映画のようだった。
「今日の事は二度と忘れないよ。最高のワンシーンだからね!」
「ん!また僕の気持ちを読んだね?」
「え、そうなのー?やったぁ〜!」
これまでどれだけ辛かったのか、そしてどれだけ泣いたのか。
僕は1ミリも思い出せなくなった。
だって幸せが僕を満たしたから。
「ねえねえ!流れ星!!」
「え!?どこどこ!?」
「えっと〜、あ!あれ!」
「願い事……!」
幸せを運ぶ流れ星。
僕がどこに行っても必ず運んでくれるはず。
君のもとへ。
僕の願いは……。
……。
よし……。
「ねえ、凜々ちゃん。」
「何ー?」
「何願った?」
「きっと広斗と同じ事だよ〜。」
「あ、やっぱりそういうと思った!」
「ええ?ついに私の心を読んだのかー!?」
「そうなのかもね〜!なんちゃって……!」
幸せは積もり積もって崩れない。
君となら。
僕は大丈夫。
「あ!今何時!?」
「あ、えっとー……。9時前だ……!」
「あっ……。」
「ま、まぁ大丈夫よ!私も一緒に行ってあげるから!安心して!」
「良かった……!ありがとう。」
「こちらこそ!」
「そうだ!広斗が遠くに行っちゃってもこれだけは約束してほしい!」
「え?約束?」
「広斗が行く神奈川はあんまり星が見えなくてもあの一番星だけは見えると思うの。」
「そうなの?」
「絶対そうだよ!あんなに明るいんだよ?だからね、その一番星を見つけたらこの曲を聴いて欲しいの!」
「曲?」
「『君の星が見えるように』」
「わかった……!いっぱい聴くよ!」
「きっと広斗聞いてる時、私も同じ曲を聞いてると思う。だから、私の事忘れないでね。」
「うん……!」
「大好き。」
「僕も……大好き。」
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