遠い遠い空へ

 君が見つけた一番星は僕にとって、遠い遠い空へと離れていくことになるだろう。

 僕から見る一番星は凜々ちゃんの言う通りならば、あまり綺麗には見えないかもしれない。

 こうやって最後が近づいてくるのか……。

 もう何も信じたくない。

 「今日は学校を休もう……。」

 ――――――

 「みんなおはよう。出欠を取るね。」

 今日もいつもの風景。でも変わった事がひとつある。

 それは……。

 「川内広斗が休みと。それ以外はみんないるね。おっけい〜。」

 広斗が珍しく欠席したことだ。

 あの子は前から家庭環境に悩まされてて、よく学校を休む子だった。

 でも最近は一緒に遊びに行ったり、星を見に行ったりして、元気が出たのか、毎日学校に来るようになっていた。

 また何かあったのかなって心配になる……。

 「今日もまた広斗の家に行ってみようかな。」

 「みんなに大きなお知らせがあるんだけど。」

 大きなお知らせ?

 「もうすぐみんな春休みに入って、4月から3年生になるじゃん?えっと実はね。広斗くんは次の終業式がこの学校最後の日になるの。」

 え……。今なんて……。

 「神奈川県の中学に転校するの。突然のお知らせでごめんね。」

 教室中が少しざわついた。

 「かながわ?東京の隣だっけ?」

 「横浜があるとこ?」

 「こっからめっちゃ遠くね?」

 「ものすごい都会じゃん」

 みんなは広斗の事よりも距離の事でざわついていた。

 私は……。

 ……。

 「凜々ちゃん?大丈夫?顔がすごい固まってるけど……?」

 「……。」

 「凜々ちゃん。広斗くんと仲良かったもんね。」

 頭の中が真っ白だ……。

 隣の子は何を言っているのかが分からない。

 先生の声も。クラスみんなの声も。何も聞こえなくなった。

 だって。だって……。

 広斗……が……。

 「そんな……。嘘であってよ……。」

 嘘であってほしかった。

 でもそんな願いが負けるほど私は涙を流した。永遠に止まらない。

 その涙の流れは私の心を壊した。

 だって今までの思い出は?これからの約束は?

 一番星の下で交わす約束もあの楽しい時間も、もうやって来ないってこと……なのか。

 終わらない。終わらせたくない。

 学校が終わったら早く広斗のとこに行かなきゃ……。

 耐えられない……。こんなこと。

 ――――――

 学校が終わり、急いで広斗の家に向かった。

 夕暮れ時になり、寒さも少しずつ強くなってきた。

 走る度に冷たい風が顔に当たり、冬が嫌いになりそうになる。

 「着いた……。」

 私は広斗の家に着いた。

 「いるかな……。」

 広斗の家を見ると車が止まっていない。

 確か親が帰るのは夜遅いって言ってたような。

 今はお家に1人でいるはずだ。

 そう思いインターホンを鳴らす。

 「何も返事がない。居ない?」

 もう一度インターホンを鳴らしたが家の中からは何も反応がなかった。

 「じゃあ今はどこに……。」

 早く広斗に会わなきゃ気が済まない。

 でも今日は無理なのかな……。

 日は沈み、星空が少しずつ見えるようになってきた。

 そんな中、私はある事を思い出した。

 この前私が言った約束を。

 あの約束通りになっているなら。きっと、あの場所にいるはず。

 広斗もこんなこと、辛いだろうって思った。

 だから私はあの一番星が見える所に走っていった。

 よく見える場所だったから周りに街灯はほとんどない。

 いつもは2人で行くからあんまり怖くなかった。

 でも1人だと周りの暗さに勇気が負けて怖さが勝つ。

 絶対いるはずだから。

 もし居たとしても広斗はここを1人で通ったのだろうか。絶対怖がると思うのに。

 そんな事を考えながら走っていると、約束の場所にたどり着いた。

 「広斗……。」

 辺りを見渡す。広斗は。

 (お願いだ……。あそこにいてくれ……!)

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