君の星が見えるように
@yufin
2人を照らす星
「ねぇ、あの星のこと知ってる?」
「どれ?」
12月の北の空には様々な星の中で一段と輝く星があった。
「あれだよ。あれ!1番光ってるあの星!」
「んー。あれ?1番輝いてる星。」
「そう!北極星!1年を通してずっと見える星なんだって!」
「へぇ〜。一等星だ……。」
一年中ずっと見える星。北極星。美しいあの光は暗闇の中で僕たちを照らしていた。
寒くて凍えそうな夜でも美しい星を見れば心が温まる。
ましてや、誰よりも元気で星が大好きな君が隣にいるから。こんな真冬でも全く寒くない。
「そういえば凜々ってもうすぐ誕生日だけど何座?」
「あ、私?いて座。」
「それ、今見えるの?」
「うーんと、射手座は夏に見える正座だから、今は見えないんだよね〜。」
「そっか。」
「場所は南の空ね。」
僕たちが向いているのは北の空。それとは反対の南の空。
北とは違い、いくつもの輝く星が見える。とは言え、田舎だから、夜の空全体にたくさんの星が見える。
「きっと都会だとこんなに沢山は見えないよねー?」
「そうなのかな……。」
「だってさ!都会ってめっちゃ町がキラキラしてるじゃん?」
「うん。」
「その光に邪魔されて見たい星が見えないんだよ?」
「そっか。確かにそうかも。」
「だからこの場所は特別だよ!広斗もそう思うでしょ!」
「そうだね〜。ここに居れば嫌なこともすぐに忘れられるよ。」
「嫌なこと?」
「ん?いや、もしあったらね〜と思って。」
「そっか。もしあったらいつでも言うんだよ!私がなーんでも解決してあげるんだから!」
「ありがとう、凜々ちゃん。」
「あ、もし辛いことがあったらまたここに来ようね!絶対ね!」
「……うん!」
一番星の下で交わした約束。これで何回目だろう。
君のおかげで、僕はたくさんの約束を果たしてきた。
悲しい時も辛い時も夜になると2人でここでいっぱい話し合った。
今夜は2人を照らす星が主人公。
でも主人公よりも君の方が輝いちゃってる。
すごいよ凜々。
だから。だから……。
「どうしたの!?広斗……?」
だって。僕……。
「……。」
言えない。言えない。
一番星の下で交わす約束がもう出来なくなるなんて……。
言えるわけないじゃん……。
「大丈夫……?」
「ごめんね。凜々。過去の事を思い出しちゃって……。
今日はもう帰るね。」
「ほんとに大丈夫?」
「うん……。」
言え。ここで言え。
「大丈夫。」
なんで言えないの。
「ありがとう。」
体が勝手に動く。僕の意に反して。戻らない。戻れない。
弱いな……。
僕はほんとにこれで良かったの……?
きっと星は知っている。何万年もの生命を見た星はきっと知っている。
これからの答えを……。
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