第15話 接触
早めに問題を解決する為、セバルにお願いしてある人物に会う約束をした。
その人物は、ここまで問題を大きくした者の一人。
低級貴族への宣戦布告者だ。
始めはセバルも誰か知らなかったが、動きを見せていたことで情報が集まり特定に至ったそうだ。
会う理由は協力を取り付ける為。
これから行うことに必要な人材だと思ったからだ。
目的は全てのヘイトをオレに向けること。
そのために動く人間が欲しかった。
表がオレ、裏がソイツになる。
「すまないが顔は見せられないそうだ」
「ああ、話ができればいい」
セバルと合流して指定された場所に向かう。
「ここか?」
「ああ、あえてだろうな」
到着した場所は、学園内でも人通りが多い場所。
一瞬目的を疑ったが、セバルの発言で疑うことをやめた。
裏でコソコソやっている方が目立つ時もある。
こういう取引の仕方もあると、学ぶことにした。
誰でも座れる長めの椅子に座り、その人物が来るのを待つ。
後ろにも椅子があり、そこに誰かが座った。
「人が多いなぁ……」
セバルが突然口を開く。
すると、
「そうだな」
と後ろから声が聞こえた。
「協力する話はどうなった?」
「問題ない。表に顔があればやりやすい」
「他に何かあるか?」
「そうだな。犯行を行った後にその手口を伝える。矛盾が生まれれば協力者を疑われるからな」
「了解した。それじゃあ」
「ああ」
セバルと合流した相手が矢継ぎ早に会話を進め、話がまとまった。
セバルが立ち上がったためオレもそれに倣う。
「これじゃあ、オレ必要だったか?」
「さあな、どんな奴か見たかったんだろうよ」
「ま、協力関係にはあるんだし何も言わないさ」
そこでオレはセバルとも別れ、通達が届くのを待った。
すると、早くもその日の夜、部屋に紙が通され犯行の一部始終を知った。
明日の朝、また騒ぎが起きることを確信した。
◆◆◆◆◆◆
ヘルトという平民の名前、オレの名前が広がり始めた頃、オレはクルデアとカイガに呼び出された。
すると、そこにはミルフィもおり、何の話か見えない。
「どうした?」
「確認を取りたくてな」
「はい。今、ヘルト君の名前が広がっていますが、仕組んだものですか?」
「そうだ」
そこで二人はホッとし、改めて提案して来た。
「ヘルトと活動する事がない今、俺たちはクラスメイトを守る為に動こうと思う」
「そうだな。そうしてくれるとありがたいな」
「ええ。ですので、朝の鍛錬から登校など、全ての活動を一旦停止し、別々で動くことを提案します」
「ああ、そうしよう。互いに動きやすくなるだろう」
妥当な提案にオレは頷く。
「ヘルト。クラスメイトは任せなさい」
「ああ、頼むよ」
ミルフィの宣言を聞き、それに期待する。
何かしら思う事があってここに来たのだろう。
ならば、それを見せてもらおうか。
そこから話すことはなく提案だけで、オレたちは別々に行動を開始した。
三人は何をするか知らないが、オレは既に決めていたことを実行する。
「何かお探しですか?」
「……魔法に関する本を」
図書館に向かい、魔法の知識を得ること。
それがオレのやることだ。
図書館にいつも居る女性の管理人は、偏見や差別をする人間ではない。
その情報をセバルから貰い、気にせず入室して本を物色し始めた。
まだ背の小さなオレでは見つける事ができないと踏んでか、その管理人は尋ねてきた。
オレはそれに答え、探してもらうことにした。
「はい、こちらにありますよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、勉強熱心で偉いですね」
「……どうも」
答え難いことを言われて困った。
勉強と言えばそうなのだが、目的がそんなに良いことではない。
名前を聞かれないだけまだマシではあるが、それが知れた時にどうなるかは想像つかない。
良い人だろうが、あまり情を持たないようにしておこう。
それからオレは、制服に付与されている魔法効果の打ち消しと、威力の消滅について調べ、実践を繰り返し研究していった。
◆◆◆◆◆◆
数日が過ぎ、新たな日常にも慣れてきた頃。
オレは一度情報を整理することにした。
クルデアたちやセバル、協力者との活動をごちゃごちゃにしないためにもやるべきだと感じた。
まずはクルデアとカイガ、ミルフィたちだ。
三人はあれから共に行動する姿をよく見ている。
クラスメイトに自衛の手段を教えているのもあるが、ミルフィが他の女子といる機会が減っている。
多少心配ではあるが、問題ないと考えての行動、そう捉えておく。
実際、オレの目的を果たせば彼女たちを心配する必要もなくなる。
三人に関しては何も問題は無さそうだ。
次はセバル。
セバルは情報を流してくれる他、先輩たちと協力関係にある。
情報源はどうしているのか気になるが、これまで外したものはない為信用している。
直近で言えば、協力者との繋ぎ、図書館管理人の性格なんかだな。
先輩たちとは、暴力行為の被害を分散させる為に話したりしているようだ。
ここも同じく、オレの目的を果たすことでコソコソする必要もなくなるだろう。
最後は、暗躍する低級貴族の協力者だ。
姿を見てないことから誰かは分からない。
だが、七日に一回は事件を起こし、オレにヘイトを向け続けている。
互いに利のために動いていることもあって、容赦なく伝統貴族たちに嫌がらせを続けている。
勿論、何かを犯してきた奴らに限ってだ。
そのせいか、何も犯してない伝統貴族たちから白い目で見られ始めた者たちの、オレに対するヘイトはかなりのものになっている。
暴力行為は当たり前、言われのないデマを流布されてもいる。
しかし、オレにダメージは無く、伝統貴族の力は目に見えて落ち始めていた。
少しずつではあるが、力を持っていた者たちが徐々に活動を低迷させてきている。
暗躍する低級貴族のお陰でもあるが、それの受け皿であるオレの功績も大きいと思う。
最近では、非力な伝統貴族がプライド任せにオレを非難してくるだけで、暴力行為も減ってきた。
良い兆候であるが、少し不安も残る。
後はオレ自身のこと。
現段階での情報整理はこれくらいか。
◆◆◆◆◆◆
暗躍する低級貴族から通達があり、それに返信する。
どうやら、犯行を犯した伝統貴族殆どに罰を与えるのが終わったようだ。
オレはそれに賛辞を送ると共に、次の行動を尋ねた。
返信にはまだ続けるとだけあり、かなり根深く恨んでいるのかと考えるほどのものだった。
しかし、平民と低級貴族への被害はまだまだあるため、続けて問題ないと思う。
ただ気になることは、オレに対してのヘイトがどれくらい溜まっているか、だ。
セバルにそれを聞いたが、オレが暴力行為を受けていることからも、そこまで溜まってはいないと考えていた。
オレはそれに素直に頷くことはできず、何かあるのではないかと考え始めていた。
何かしら大きな反撃があってもいい頃。
しかし、それがないとなると、何か企んでると踏んで行動するべき。
何となくでの考えだが、そうすることを決め、セバルともう一人の低級貴族に通達した。
反撃のターンを与えることで、ガス抜きにもなるし、こちらの思うように動く可能性も上がると踏んだ。
暗躍する低級貴族には、腕を磨くよう時が来るのを待つように伝えた。
セバルにも一度犯行を止めると伝え、何があってもいいよう備えるように忠告した。
後は伝統貴族が乗ってくれるかどうか。
それ次第で行う行動も変わってくる。
そろそろ次の段階に移ってもよさそうだが………。
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