第12話 オーラとか…

 午後の授業は文化祭の話し合いに当てられた。亀やんは希望通り、クラT係になった。私は、お爺ちゃんが怪我をしている事を伝え、あまり手伝いも出来ないかもしれないので裏方に回った。


「じゃぁね~、ごめんねみんな。明日は手伝えると思うから。家で出来る事なら持ち帰ってするし、何でも言ってね」


「あぁ、いいよいいよ。お爺さんと二人なんだし。それより、お大事にね~」


 バイバイとクラスを出て、下駄箱の前で意外な人に出会った。


「やぁ、君は建美ちゃんだよね?」


 私? と、後ろを振り返ってみるが、まぁ私が建美なんだし、私だよね。


「は、はい」


 一年の下駄箱に寄りかかり私を待っていたのは岬先輩だった。

 今日はどのクラスも文化祭準備の初日なので生徒は誰もここには居ない。てか、寄りかかる姿が絵になる! めっちゃイケメン。目の保養だね~。


「急にごめんね。初対面だよね。俺は二年の岬迅みさきしゅん。今朝、チャリ置場で見かけて、近くの人に君の名前を教えてもらったんだ。でね、突然こんな話信じられないかもしれないけど、俺、実はオーラが見えるんだよね」


「… へぇぇ」


 ほんのちょっとだけ、マジでちょっとだけ期待したじゃん! 何だよ、告白じゃ無いのかよ! あやしい勧誘かんゆうか? 『つぼ買いませんか?』的な?


「君さぁ、何かに取りかれてない? 最近さぁ悪夢とか見ない?」


 …


 とりあえず、悪徳商法ではなさそうだな。

 さぁ、どう切り返えそうか。『オーラ』か。これまた微妙な。これってタケル様関係なのかな? でも今は一緒じゃないし、どうするべきか…。


「いえ、何ともないです」


「そっか… ちょっとびっくりするかもしれないけど、君のオーラが半端ないんだ。何て言うか、メラメラと燃えるような感じ? すごいオーラなんだ… 悪夢を見ないなら、地縛霊とか悪霊とかじゃないのかなぁ… それなら何だろう、この大きなオーラは…」


 岬先輩は私の身体の周りを見ながらブツブツ言っている。


「あ、あの~、身体は何ともないので。あと、私の家が神社なのでその関係じゃないかと」


「え? そうなの? 神社の子か… でもなぁ、こんなオーラを今まで学校で感じた事なかったんだけどなぁ。最近何かあった?」


 す、鋭いな。この週末にタケル様に出会ったのは確かだし。そのせいで私のオーラとやらがすごい事になったって事? でもな~、タケル様の事は言えないしな〜。


「先輩は、見ず知らずにも関わらず心配してくれたんですよね? なら、私は大丈夫です。今日、帰ったら一応お爺ちゃんにお祓いしてもらいますね。わざわざありがとうございます」


「え? オーラ… 信じてくれるの?」


 はぁ? じゃぁ何で話したんだよ!


「まぁ、一応」


「そっか、君いい子だね。大抵はうやむやにされちゃうのに… 『それよりもっと静かな所で話そう』とか『私だけ特別に』って、違う話になっちゃうんだよ~何でだろう。ははは。まっ、でもこれも何かの縁だし今度ゆっくり話でもどうかな」


「あはははは、すみません。急いでいまして。家族が怪我をしたので介護しなくてはいけなくてですね。すみません、では」


 うぇ~ん。せっかくあの岬先輩に誘ってもらえたけど、『オーラ』とか… 

 勘が鋭い人? 私、近づいたらダメ系じゃん。や~ん、せっかくお話し出来たのに…


「そっか… 残念。また話そう。ラインとか交換しない?」


「すみません。本当に大丈夫なんで」


「そう? じゃぁ、何かあったら相談してね。二年五組だよ」


「あぁ、はい」


 岬先輩はそのままイケメンスマイルで下校する私を見送ってくれた。


 あっぶな~。岬先輩って、あんな感じかぁ。相談って、してどうにかなるのか? どうにも出来なくない?




 私は学校から帰ったら一番に、さっきあった事を丸っとタケル様へ報告した。


「そうかぁ、オーラなぁ。ククク」


「はぁ~、オーラとか。テレビや本を見過ぎだろ。そいつはどんなやつなんだ? お前との関係は?」


 と、綾人さんも一緒に話を聞いている。相変わらず私に対しては偉そうなんだよね。


「う~ん、学校のアイドル的なポジです。顔面偏差値が京大並みです。話した感じではホヤ~っとしてましたね。私は今日初めて話したので面識はありません。以上」


「アイドル? いい男か?」


 タケル様は顔面が気になるよう。


「優しい系? ほら、テレビで見た事ありませんか? KPOP系です」


 綾人さんも先輩が気になるのか話に乗ってくる。


「ほぉ。その初対面男がいきなりオーラが見えると… そいつ頭大丈夫か? それか、アイドルと言われるぐらいだ、人気があるなら知らぬ間に人の『陽の気』を取り込んだのかもしれない。元々、勘は鋭いんだろうな」


「それって放って置いて大丈夫ですか? 先輩が鬼とかになりませんよね?」


「あほか、『陽の気』で鬼になる事はまず無い。逆にモテるんなら同じ男子からや元カノからので『隠の気』がまって鬼とまではいかないが、原因の黒い霧が出るかもな」


「え~、それって鬼の素ですよね。ダメじゃん」


「相当な恨み辛みがない限り大丈夫じゃ。それより其奴そやつは『メラメラとしたオーラ』が見えると言ったのじゃな?」


「はい」


「うん、其奴も巫女シャーマンの素質があるな… そうじゃ、建美! これもなんかの縁じゃ。恋人になれ」


「はぁぁぁぁ? さっき初めて話したって言いましたよね? 何で恋人なんか… てか、タケル様はてっきり近づくなって言うのかと思っていました」


「いや、素質があるのはいい。今の時代には珍しいからな~未来の婿候補じゃ。お前も十六歳じゃろ? 神社の為にもそろそろ結婚を考えなければ」


「はぁ、タケル様、いつの時代ですか。今は十六やそこらじゃよっぽどでない限り結婚しません!」


「え? そうなのか?」


 タケル様はキョトンとして綾人さんを見る。


「まぁ、そうですね」


「そうか… 惜しいな。せめて友人にでもなっておけ」


「嫌ですよ、あんなモテ男。私は目立つの好きじゃないんで。私の中の先輩は観賞用イケメンです」


「観賞用とか… これだから今時の女子高生は意味不明だ」


 綾人さんはバカにした様に呆れている。


「てか、綾人さんも学生時代はモテたでしょう? 先輩の気持ちがわかるんじゃないですか? あぁ、でも、綾人さんの場合は顔面でしたね。ははは、失礼しました」


 ふ~んだ。ばーかばーか。


「ぐっ。人がせっかくやさしく話を聞いてやれば!」


「大きなお世話です~。タケル様に聞いてもらったんです~」


 青筋立ってる綾人さんとそれをおちょくる私はちゃぶ台を挟んで睨み合っている。


「止めんか! ほれ、それより建美、着替えて来い。御勤めをするぞ」


 私は『ふんっ』と顔を背けて部屋へ向かう。綾人さんも今日は手伝ってくれるので準備に向かった。


「本当にお前らは、もうちっと仲良くせんか。はぁ~」




 私は着替えをしスティック片手に神社の拝殿前に来た。


 今日は二体って言ってたよね。どんな鬼かな。なんて考えていると、綾人さんも遅れて到着した。


 濃紺の袴に白の上着、たすき掛けをし大きな弓を持っていた。


「綾人さんの神器は弓ですか?」


「それ以外、何に見える」


 クイっとメガネを上げてノールックで返事をする。ク~、ムカつく~。


「用意はいいな。まず、綾人、お前の神器じゃが構えるまでの動作を速く出来るように鍛錬しなければならん。弓を張るまでの数秒が命取りになりかねん」


「はい」


「建美、お前はスティックを振り上げた時に無防備になり過ぎじゃ。振り上げたら直ぐに落とせ。振り上げたまま停止するのは良くない」


「はい」


「今日は二体居るのでな。一体づつ仕留めてもらおう。まずは、綾人からじゃ」


 タケル様は神社に結界を張り、拝殿の結界を解く。そして、一体だけ『縛』で縛って動けないようにした。


「では、綾人。今日は市姫が居らんからな。我も補助はするが自分でやってみろ」


 拝殿から出て来た鬼は二メートルくらいの中型だ。綾人さんを見つけるといきなり襲いかかる。


 まずは弓を構えて言の葉で『矢』を放つ。弓から放たれた三本の矢は鬼に向かって行くが、二本は弾かれ一本が腕に突き刺さった。

 一瞬ひるんだ鬼に、更に『矢』を放つ。今後は大きいのを一本。はっとした鬼は腕を抑えながらさっと避けてしまう。今後は鬼の口から黒い煙が吐き出された。ボォーと煙が綾人さんへ襲いかかる。


『盾』


 間一髪で黒い煙を防げたはいいが、鬼が綾人さんの眼の前まで飛び出して来ていた。


「あ、危ない!」


 タケル様は瞬時に『礫』を放ち、鬼を後退させた。


「ふ~。良かった~、ナイスですタケル様」


 タケル様はまた腕組みをして綾人さんと鬼を見ている。トドメは刺さないつもりなのかな? あくまで手助けって感じ?


 綾人さんは再度弓を構えるが、鬼は『矢』を警戒して間合いを取っている。


「いかんな… 長期戦になれば綾人が不利じゃ。おい! 綾人、他の言の葉は出来んのか?」


「…」


「分かった。では交代じゃ。建美、次はお前じゃ。お前も自分で出来る所までやってみろ」


「は? 私、一人でなんて… 『盾』しか出来ないのに」


「あぁ! そうじゃった… う~ん。今日はここまでじゃ。建美、我を呼べ。一気にカタをつける」


「はい」


 と、タケル様と同化して、今日の鬼二体はすんなり退治された。


「今後の課題が見えて来たぞ。明日から覚悟するように、特に綾人。お前は朝と昼も稽古をつけるのでな、分かったな?」


「かしこまりました」


 今日は、それぞれの実力を測った感じでお開きになった。

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