04 傷だらけ(1)

学校に行っても、

お姉さんのことが気になって気になって仕方がなかった。

ただ、授業も掃除も食事も全部どうでも良くなって彼女のことだけを考えていた。

彼女は、過去になにがあったのか、今どんな気持ちなのか。

今の私の気持ちと一緒ではないのは確かだ。


そういえば、彼女は私のことを

『お日様みたい』

と言っていた。

あれは、どういう意味なんだろう。

太陽がキラキラしているみたいに、

私が希望に満ちているように見えたのだろうか。

なんて、そんなことはないか。

蛙の子は蛙なんだから。


やっと学校が終わり、公園まで歩き出す。

私がこんな明るい気持ちになっているのは、

お姉さんのお陰だ。

お姉さんに出逢ってから、私は変わった。

つまり、私は彼女に救われた。

今だけがこんなに希望に満ちてるだけかもしれない。

普通に該当する人間が、

毎日希望に満ちて生きてるわけではない。

必ずしも、毎日みんなが元気なわけではない。


なんて考えていると、いつの間にか公園に着いていた。

彼女の姿が見える。

珍しく、猫背だ。


「お姉さん」

「こんにちは、君はいつもと違って元気だね」

「元気じゃないです。

私は貴方のことで頭がいっぱいです。

悩んでたんです、ずっと」

「ちっぽけな悩みだねぇ」

お姉さんが真顔で言った。

いつもなら笑っていたんだけど。

いや、お姉さんの本質が出てきただけ。


「ちっぽけですね、確かに。

でも、貴方は私がこんなちっぽけな悩みを言ってる間もずっと悩んでいるはずでは?」

「そういえば、君に言うんだっけ。

私のこと。」

「その言葉、ずっと待ってました」

「私は、本当に名前なんか忘れた。」

「なんで?」

「覚えていたくなかったからに決まってるでしょ

あんな人に付けられた名前を死ぬまで覚えるなんて、心が苦しいだけだからさ」

「あんな人って誰のことなんですか」

「両親。言わせんな」


お姉さんは呆れた顔をした。

段々、彼女の本質が出てきている気がした。


「意外と毒舌なんですね、かわいー」

「真面目になってもらっていいかな?

真剣な話するつもりなんだけどさ」

「真面目なんですけどね、十分。」


私が笑って言うと、お姉さんは呆れた顔をする。

そして、彼女は真剣な顔でまた話し出した。


「私の本当の両親は、私が名前をつけられる前…生まれた後に死んだ。

お父さんは交通事故、お母さんは負担が大きすぎたんだ。

そして、生まれた後、知らない人に引き取られた。」

「お姉さんは、親戚とかに引き取られなかったんですか」

「親戚は引き取ることを断ってた。

私が不潔で呪物のような子供だからってね」



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