03 なりきれてない
今日は、少し眠れた。
彼女のことを考えると、良い思い出が沢山出てきて気持ちが高ぶった。
こんなこと、人生で初めてだった。
調子が良いまま、ベッドから出て、顔を洗う。
こんなの久しぶりだ。何年ぶりだろう?
制服に着替え、髪の毛をセットする。
そして、ご飯も少し食べる。
気持ちが快い。
これまでの悩みがちっぽけに思える。
生きていてよかった、
なんてことも思ってしまう。
靴を履き、扉を開け、外に出る。
お日様がキラキラしている。
時間が余ったから、彼女と出逢ったあの公園で少し過ごすことにした。
公園に行くと、そこには、
髪の毛がぐちゃぐちゃしていて、靴を履いておらず、血が染みついた長袖を着ていてブランコに乗っている彼女を見つけた。
「どうしたんですか、その服…」
「…ひいた?」
「ひいてないです、なにも。
調子、悪いんですか」
「てんりは調子が良さそうだね。お日様みたい
私はいつも悪いよ、知らないだろうけど」
「あの、左手に何を持ってるんですか」
彼女の左手には、ナイフみたいな危ないものが握りしめてあった。
「…知りたい?」
「はい」
「手首、みて」
彼女の手首は、大量の血がついていた。
今にも溢れ出している。
「ハンカチ、どうぞ」
「大丈夫、袖でふくから」
「いや、でも…」
「あなたには何もわからないでしょう」
「わかります」
「何が一体わかるのかな〜
名前も家庭環境も学校もわからないくせに?」
「お姉さんが今感じていることがわかります。
今まで、抑えてきたんですよね?この気持ち」
お姉さんは確信をつかれた顔をする。
どうやら、これが彼女の本質みたいだ。
「てんり、早く行かないと遅刻するよ」
「またそうやって逃げるんですか」
「逃げてなんかない。
誰も私の気持ちなんてわからないし、知り得ないから言ってるんだ。
みんな知ったかぶりしてるだけなんだよ」
「私は、お姉さんのことを…」
私がそう言おうとすると、お姉さんは察したみたいで、私の言葉を遮って被せてきた。
「なにも分かってない、貴方は」
「でも…」
「人の気持ちって計り知れないじゃない?
心なんか読めないし、私が言わない限り何もわからないでしょ。」
「じゃあ、言ってくださいよ。
お姉さんの気持ち」
お姉さんが大きく目を開く。
「君は早く学校に行くんだ。
そして、学校から帰ってきたらここにきて。
全て話す、いや一部だけ話すから」
お姉さんは下を向いて言った。
「約束ですよ」
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