美酒
「さあ、ルークも一杯くらいどうだ?」
フレディに酒をすすめられたのは夕食のときだった。
「うまいよ、味を知っておいてもいいだろう」
ルークは恐々「じゃあ」と答えた。
フレディはルークを尊い存在に思った。「ルーク、きみは
ルークは義父の真意なんぞ知る由もなく、「どうでしょう……」とだけいって笑った。
給仕人に二種類の酒をグラスに半分づつ頼んだ。給仕人は愛想よく応じた。
美しい琥珀色の
メイナードは夫の姿を見守りながら、思わず微笑した。あんまりにかわいらしかったのだ。「どうだい?」
ルークはぴりぴりするような
「口に合うかい?」
「苦い、のかな……おもしろい味がする」
恐々と匂いを嗅いでは酒の様子をうかがうようにしながら口に含むのがあんまりにかわいらしく見えて、メイナードはたまらず笑った。
「なんだろう、くせになる」
「そうかそうか」
ルークは深紅の
ルークは
「ぶどうだけど、おれの知ってるぶどうじゃない」
「どっちが好みだい?」とフレディ。
「こっちかなあ」とルークが選んだのが
ルークは夕食のうちに、結局グラス半分の
酒を知らない体は一杯強のアルコールにすっかり熱を帯びた。頭がふわふわとして、なんだかやけに愉快な心地になった。夫に近づきたくなって「なあ、メイナード」と呼んで「なんだい?」と応えてもらっては声を立てて笑った。
フレディは義息に親友を重ねた。ジュリアスもあまり酒に強くなかった。
へらへらと笑うルークにつられてアダルベルトも楽しそうに笑いだし、それはそれは明るい夕食になった。
「アダぁ、楽しいのか? へへへ、おまえはかわいいなあ」
夕食は明るく済んだが、へらへらと笑いつづけるルークはメイナードが運ぶことになった。
「ルーク、部屋へいこう」
「んへへぇ、メイナードだあ」
「そうだ、私だよ。さあ部屋へいこう」メイナードはルークの腕を自分の首にかけて、彼がここへきた日にそうしたかったように、一方の腕を彼の背もたれに、もう一方の腕を彼のフットスツールにして抱きあげた。
「うわあ、すごいねえ、おれの旦那さまは力持ちだあ」
メイナードはえへへえへへとにこにこしているルークがなにかいうたび返事をして、広間を出て廊下を進み、階段をのぼった。
「すごいねえ、おれメイナードに抱っこされてるよお」
「ああ、私は尊いひとを抱いているよ」
「んへへえ、とーとい? メイナードはおれがとーといんだあ?」
「ああ、尊い。なにより尊い」
メイナードはルークの部屋のドアを開けて、彼をベッドに寝かせた。ベッドと彼の体との間から腕を引き抜くと、ルークはなにかいって腕を摑んできた。
「うん、なんだい、ルーク?」
「こーたいし……メイナード……」
メイナードはルークのそばに膝をついた。「なんだい、ルーク」
「メイナード、おまえはかっこいいなあ……。んへへ、きれーいな顔してるんだ。おまえの心が顔に表れてる」
メイナードはルークのくちびるにそっとくちづけした。「さあ、慣れないものを飲んだんだ、もう寝た方がいい」
「おまえは優しいなあ……おまえは優しいよ、優しい……。おれはな、メイナード、世界で一番の幸せ者だ。んへへ、だってメイナードだぞお、メイナードに愛されてんだ、えへへえ、幸せだあ……んふふ、いいだろお」
メイナードはルークの髪を指で
「んふふ、好き……メイナード、好き……」
「私もきみが大好きだ。愛している」メイナードは「おやすみなさい」といって、もう一度くちづけした。
「きみに出会えたことは、私の知りうる最大の幸福だ」
メイナードは愛くるしい寝息に「愛している」とささやいた。
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