頑固な婚約者
「なあ、皇太子殿下?」
城のなかに戻って浴場を出たあとのことだった。メイナードは愛くるしい呼び声の主を見た。胸の奥が、きゅっとした甘やかな苦しさを訴える。愛おしい婚約者を腕のなかに閉じこめることができたなら、もしかしたらこの苦しさはちょっとでもやわらぐかもしれない。
ルークはいった。「このあたりに湖とか、穏やかな川なんかはないのか?」
「どうして?」
「水浴びがしたい」
メイナードの甘い苦しみは吹き飛んだ。「だめだ!」
ルークは皇太子の怒ったような声に驚いた。「なんだよ、急に。なんでだめなんだ?」
皇太子が突然足を止めたから、ルークもその隣で立ち止まった。
「だめだ、だめだ。認められない」
「だからなんでだって訊いてんの」
「認められない」
メイナードはほとんどパニックになっていた。彼が水浴びだと? そんなことを認めるわけにはいかない! 水浴びをするというなら、彼が服を脱ぎ捨てて水のなかに入っていくわけだ、彼が服を脱ぎ捨てて!
メイナードは深呼吸して、努めて冷静にいった。「湯浴みならここでできる」
「ああ、いや……」ルークはぽりぽりと耳の後ろを掻いた。「落ち着かないんだよ。さっき見せてもらったけど、おれはやっぱり、外で気楽に浴びたい」
「だめだ」
「なんだよ、近くに水浴びのできるようなところがないのか?」
「ある」メイナードはひどく苦しみながら答えた。かつて、ばか正直な自分の性格をこれほど嫌いになった瞬間はなかった。
「なら案内してくれよ」
「嫌だ」
「まったく、なんてことだ。案内してくれるのは、あくまでも城の敷地のなかだけだっていうのか?」
「水浴びは認めない」
「頑固な皇太子だなあ!……頑固すぎて会話になってないよ。どうしてそんなに室内での湯浴みにこだわるんだ? おれは平凡な農民の息子だ、これまでに湯浴みなんて、ほとんどしたことがない。よっぽど寒くて、かつよっぽど体が汚れた日くらいだ。それ以外はいつも近くの湖で水浴びした」
「それでも認めない」
「理由を教えてくれよ。なんで許してくれないんだ」
「外は、危険だ」
「危険だ? 気性の荒い肉食動物でもいるってのか」
「穢らわしい罪人たりうる素質を持った悪人がいる」
「なんだよそれ」
メイナードはぎゅっとくちびるを噛んで、ぎゅっと目を閉じて、それからゆっくり深呼吸した。「きみに、屋根も壁もない場所で、」メイナードはまた深呼吸した。ああ、口にするのも恐ろしい! 「服を、ぬ……脱がせる、わけには、いかない」
「なら、だれか見張りを連れていくって約束しよう」
「だめだ!」
皇太子があんまりに大きな声でいうものだから、ルークは反射的に首をすくめた。「ああ、皇太子殿下。どうしてそんなに怒る?」
「当然だ、きみの姿を見る者があるような状況は認められない」
ルークはきのうの皇太子の様子を思い出して、大丈夫だと自分にいい聞かせた。「じゃあ、それなら、おまえが見張りをするか?」
メイナードは自分の顔が真っ赤になったのを感じた。「なにを! きみは、きみは……ああ、なんて、……鈍い!」
「鈍い?」
「浅はかだ! ああ、ひどく、ひどく
「ならどうすればいい。おれは水浴びがしたい」
「だめだといっている。水浴びは認められない」
「ああまったく、あんたはなんて頑固者なんだ」
「こればかりは絶対に認められない。
ルークは困り果てた。どうすれば皇太子は水浴びを認めてくれる?
「なあ、皇太子殿下。おれは水浴びしないと落ち着かないんだ。だって、今まで毎日、湖で汗を流してから寝てた。家を出てからそれがなかったから、今すぐにでも水浴びがしたいんだ」ふと思いついて、つづける。「よし、それじゃあ、陽がすっかり沈んでからいくことにしよう。夜なら、建物のなかも外も、服を着ているも脱いでいるもおなじようなものだ。そうだろう?」
メイナードは泣きたくなった。婚約者のこだわりの強さに困ったのと、愛するひとのやりたいことを喜んでやらせてあげられないことが苦しかった。
ルークは皇太子の半べそかいたような顔に悪いことをした気になって、つい「ごめん」といった。
「ごめんって。そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。おれはただ、水浴びがしたいんだよ」
「嫌だ」
「なにがそんなに嫌なんだよ? 今まで当然にやってたことだ。それともなんだ、この聖なる皇城の附近は治安が悪いのか?」
「私は、怖い」
「怖い?」
「きみが傷つくかもしれないことが、怖くてたまらない」
「傷つく? 尖った小石を踏んでけがをするって?」
皇太子は首をふるふる振った。「きみの魅力が捕らえるのは、私だけではないかもしれない。きみの髪の一本が、まばたきに動くきみの
「おれは——」
「そんなことになっても、私はきみを慰めるすべを持っていない。私の声も言葉も、この腕も、胸も、きみに安らぎを差し出すことはできない。きみはここから離れたいと願うだろう。きみが望むなら、私は喜んできみを見送ろう。きみの安寧を祈って生きよう。しかしそれが解決に導いてくれるわけじゃない。きみの傷が癒えるのはそんなふうに易いことじゃない。きみが長い間苦しむくらいなら、私は、きみにそんな傷を負ってほしくない」
なんということか、皇太子はゆっくりと片膝をついた。「どうか、どうか私のわがままを聞いてほしい」
アダルベルトもルークとおなじように驚いて、メイナードの背中を叩いたり不器用に声をかけたりした。
「アダ」代わりにルークが呼んだ。「皇太子殿下は元気だよ、大丈夫だ」
アダルベルトにルークの声は届かないで、彼はメイナードの背中を叩いたり肩を叩いたり、あるいは体を揺さぶったりしながらうんうんと声をかけつづける。
ルークは内心苦笑して、「わかったよ」と皇太子に答えた。「水浴びはしない、おとなしく湯浴みをする」
メイナードは救われた心地がした。ふわりと体が軽くなったようだった。深く頭をさげる。「ありがとう」
「いいから、早く立てよ。アダルベルトが心配してる」
メイナードはようやく立ちあがると、かわいい付き人の背に腕をまわした。「ありがとう、アダ。私は大丈夫だよ」
「皇太子殿下、あんたにはおれより、アダルベルトのほうが似合ってる」
ちょっとからかうだけのつもりが、皇太子はまた半べそかいたような顔をした。「ええ……ごめんって、悪かったよ」
アダルベルトはメイナードの抱擁を受けながら、ちょっと怒ったようにうんうん声をあげる。
「心配したんだよっていってるのか?」
「ごめんね、アダ。大丈夫だよ。ルークに、ちょっとお願いをしていたんだ」
「なあ、皇太子殿下?」
メイナードは愛おしい声の主を見た。
「水浴びがしたいんだ」
ルークはとうとう皇太子が怒り出しそうな気がして慌ててつけ加える。「違うんだ、違う! きょうだけ、きょうだけって約束するよ。最後の水浴びだ。あした以降はきっとここで湯浴みする、きっとだ」
メイナードはいよいよ泣きそうになりながら「認めたくない」とつぶやいた。
「頼むよ。さっきもいっただろう、家を離れてからずっと体を洗ってないんだ。もう一度くらい、思いきり水浴びしたい」
メイナードは大きな決心をして、とうとう「わかった」と頷いた。
「ただし、私が見張りをする。それが嫌なら諦めてくれ」
ルークはあまり怖いとは思わなかった。彼はたぶん、おれを襲ったりしない。
「わかった。ちゃんと見張っててくれよ」
メイナードは黙って頷いた。ルークに不必要に近づいた者には剣を抜く、それがだれであろうと!
ぐずるアダルベルトを皇太子がなんとか説得して、二人、廐舎にきたが、ルークは自分をのせてここまで戻ってきた馬を見分けられなかった。
「ああ、皇太子殿下。頑固なあんたを説得するのに必死だったせいで、さっき紹介してもらった馬を忘れちゃったよ」
「エドウィン」メイナードは短く答えた。「きみがのってきたのは、エドウィンだ」
「どこかへ出かけるのですか?」小さな廐番が声をかけてきた。「すぐそこまでだ」とメイナードが応じる。
「だれか付き添いを呼びますか?」
オーガスト少年の善意に、皇太子は「いらない」といささか冷たく返した。
「悪いね、オーガスト。皇太子はおれのわがままのせいでぴりぴりしてるんだ」
「わがまま?」
「水浴びにいくんだ」
廐番の少年は明るい顔で「いいですね!」と頷いた。
「ぼくも、」といいかけた少年を皇太子が「だめだ」と厳しく制止する。
「きてはいけない。きみだけじゃない、ほかの
「ああ、はい」小さな廐番はちょっとあっけにとられた様子で「わかりました」と答えた。「ええと、お二人はエドウィンと出かけるのですね?」
ルークは「いや、」といいかけた皇太子を見た。「おれは馬にのれない」
皇太子の顔が引きつった。
「ああ、その……これまでにのる機会がなかったんだよ」
「わかった。ハーヴェイといく。私が手綱を握る、きみがハーヴェイにのるんだ」
「ああ、それじゃあ、ハーヴェイの準備をしますね」いそいそといったオーガスト少年に、皇太子は「問題ない」と答えた。
オーガストは不思議に思った。たかだか水浴びをすることがどうして、ルークのわがままで皇太子の機嫌を損ねることになるのか。
「兄さまはなんといって水浴びを止めたんです?」
ルークは返事に困って首を掻いた。「ああ……皇太子はちょっと、神経質なところがあるみたいだね」
「そうなんですか?」
「外で服を脱ぐのはよくないっていうんだ」
「そうなんですか? ぼくは小さいころ、よく兄さまと——」
「つまらない話はやめなさい」ひんやりとした声がした。皇太子が馬の準備を整えてきたのだ。
「ルーク、のれるかい」
「どうってことない、馬に指令を出す方法がわからないだけだ」
むだな意地を張って、ルークはちょっと不恰好に馬の背に跨った。
メイナードは婚約者が無事に馬にのったのを見て、ゆっくりと愛馬を引いた。
ルークは皇太子の引く馬の背にのって森のなかを進みながら、「皇太子殿下」と呼びかけた。
「馬を使わないといけないくらい遠い場所にあるのか?」
「すぐそこだ、この森を抜けたところにある。きみをハーヴェイにのせたのは、きみに乗馬に慣れてもらうためだ」
「慣れる必要があるのか?」
「一秒でも早く、一メートルでも遠くへいかなければならないとき、馬は強い味方になる」
「おれが水浴びでひどい目に遭うと、本気で思ってるのか?」
「きみは魅力にあふれている。私がこれよりすこしでも我慢のできない
ルークはすっかり黙りこみそうになって、なんとかくちびるを開いた。「匂いも感じないのに?」
「私は、自分がきみの体質に惹かれたのではないと思っている。私は、どうしようもなくきみが好きなんだ。あの日、きみの家からこちらに戻ってくるときには、もうきみのことしか考えられなくなっていた。きみは私の求婚を拒むだろうと思っては苦しくなった」
「でも皇太子殿下? わざわざ答えを聞きにきて、嫌ならそれでいいといったのはおまえだぞ」
「父やきみの体質について知らなかったからだ。私は父から生まれたのだと聞いたが、信じられなかった。男が子を産むなんていうことは、とても信じられなかったのだ。きみに惹かれてしかたなかったから、信じたい気持ちはあふれるようだったけれど」
「今は?」
「うん?」
「今は信じてるのか?」
皇太子は小さく首を振った。「もう考えるのは止した。私はどうしようもなくきみを愛おしく思っている。もしもいつか、きみが私を認めてくれたなら、もうそれ以外のことはなにも重要じゃない。名前を残すことなど、きみと生きていけることに比べればあまりにくだらない」
「皇太子殿下」
「どうした?」
「おれは、子を産めるよ」
馬と皇太子と、六本の足がとまった。皇太子が馬上の自分を見あげる。
ルークは息を吸ってくちびるを開いた。「薬が欲しいといっただろう? 陛下とか、おれとか弟みたいな、特殊な体を持って生まれたやつが欲しがるものだ。陛下もおれも弟も、独特の匂いを持っている。この忌まわしい匂いは意思とは無関係に定期的に強くなって、特定の者を誘う。その相手と、——」
吐き気がして口をつぐむ。口元に手の甲をあてて、ゆっくり息を吐く。
メイナードはルークを抱きしめたくなった。背をさすり、頭をなでてやりたくなった。それが叶わないことがつらい。「すまない、すまない。ひどいことをした」
ルークは小さく笑った。「だれが、おまえがか? なにもしてないだろ?」
メイナードは自分のいくつか目の想像が正しかったのだと確信した、ルークに『花』の家族がいるという想像が。それから、ついに、男が子を産むことがあるのだということも。
「すこし、休むかい」
「いや、大丈夫だ。……ありがとう。おまえのおかげで、弟はちゃんと薬を飲める」
「きみがここにきてくれたからだ。ああ、ルーク、きみはどんな覚悟を持って私のもとにきたことだろう!……今後なにが起ころうと、私たちはきみの家族に薬を送ると約束しよう」
ルークは深呼吸して手をおろすと、皇太子をからかってやろうと思った。「おれさまにぞっこんだな、皇太子殿下?」
メイナードは愛おしい婚約者をまっすぐに見つめて頷いた。「ああ、そうだ」
ルークは呆れて笑った。「この変人め」
「私はそうは思わない」
中年の男は二つの声から樹に隠れて、驚きに震えた。メイナード皇太子は父親から生まれた! 皇太子は父親から生まれた!
森を抜けると、ルークは幼い子のようにはしゃいだ。
「おお、川だ川だ! もうおりていいか?」
「気をつけて」
メイナードがいい終わるより先に、ルークは「おいしょ」と着地していた。そのまま川端まで走っていくと、いきなり服を脱ぎはじめた。メイナードは慌てて顔を背ける。ああ、なんてことだ、私の愛くるしい婚約者は自らの魅力を一つも理解していない!
楽しそうな声とじゃばじゃばと水の動く音がして、メイナードはようやくルークを視界に入れた。
「ああ、最高だよ皇太子殿下!」
「なによりだ」
ルークは周りに気にかけることのない自由な水浴びにすっかり興奮していた。これまではいつも弟がそばにいた。決して彼から離れないようにして、視線は常にあちこちへ動いていた。弟の匂いを嗅ぎつけた悪魔が近くにいないかと、張りつめた神経はとうとうはち切れそうだった。今はその緊張がまるでない。
「皇太子、あんたも入れよ、気持ちいいぞ!」
「ふざけるな!」
メイナードにはもはや、相手に自分の声がどう聞こえるかなど考える余裕はなかった。ただでさえ魅力がひとの形をしているような男が目の前で服を脱ぐ様子が網膜に焼きついているのだ。そのうえ、服の形に陽焼けの跡がある魅惑的な肌を全身さらして誘われてはたまったものじゃない。メイナードはただの身勝手な人間であって、石でも樹木でもない。魅力を感じれば心は波立つし、欲求を抑えこむような不自然な状態に耐えるのも永遠にできるものではない。
「ルーク!」
「どうした、入りたくなったか?」
「きみは一度、鏡を見るべきだ!」
「なんだ、緑の目をしたブロンドの美男子でも映るのか?」
ルークは上機嫌に笑い声をあげると、水に顔をうずめて、きれいな川のなかを眺めた。
メイナードのほうは上機嫌にいられるはずもない。ルークが望んでいないのに、彼の髪や肌やくちびるにふれたいと思うのが不快でならない。くちびるを噛み、こぶしを握ってまぶたのなかから天を仰ぐ。深呼吸しながらまぶたを開き、指を伸ばしてくちびるを放す。
ルークは顔をあげて濡れた髪を振った。
「なあ皇太子、ほんとうに入らないのか?」
「きみは私をなんだと思っている?」
「ん? 皇太子だ。ちょっと変人の」
「私は二度と、きみの私に対する第一印象を否定できない」
途端、ルークは苦しくなった。感情的になって吐いた言葉が、彼にトラウマといっていいほどの傷を刻んだのだ。
「皇太子。皇太子、おれはあんたに、ほんとうにひどいことをいった。でも、……もういいわけにしかならないけど、……おれはもう、おまえを悪魔だなんて思ってない。おまえはむしろ、天使みたいなひとだ」
ルークは水を掻いて岸に向かった。「なあ、皇太子、」
「服を着ろ!」
ルークはものすごい勢いで飛んできたタオルを受けとった。
「きみは、きみはまともじゃない!」
ルークは体を拭きながら苦笑した。
「ああ、きみにきみの魅力を伝えるにはどうすればいい! きみはもっと自覚を持つべきだ! こんなところでそんな姿をさらしてはいけないし、私をからかうようなことをしてもいけない。よし、わかった。きみは自惚れることだ。自分は美の化身であり、存在がひとを惑わせると思うことだ」
ついに話がわからなくなってきた。タオルを巻いた指を耳につっこんで聞き返す。「え、なんだって?」
「きみはそこにいるだけですべてを惑わし、欲求を煽る。きみをきみたらしめるすべてのものは、いたずらな無邪気の魅力を持っている、そうでなければ、きみ自身がそうした魅力それ自体であると自覚するんだ!」
「皇太子殿下。あんた、私をからかうな、からかうなっていうけどさ、あんた自身はどうなのさ?」
メイナードは自分の眉間にしわが寄るのを感じた。「どういう意味だ?」
「あんたはおれを、からかってないのかっていってるんだ」
「きみは私にからかわれていると感じているのかい?」
「そんなに褒めはやして、からかっているよりほかになにがある?」
「きみは、水浴びをした」
「なに? ああ、そうだ。頑固な皇太子殿下を説得して、ようやく水浴びができた」
「きみに、あたりに水浴びのできる場所がないのかと訊かれたとき、私はないと答えたかった。でもできなかった。私はどうしようもなく、うそをつくのが苦手なんだ」
腰にタオルを巻いてしばったきり、ルークの手がとまった。「うそをつくのが苦手だって?」
「ばか正直な者が、うそをつくのが苦手だなんてうそをつけると思うかい?」
「それじゃあ皇太子、あんたは本気でおれが好きなのか?」
「だからそうだといっている。こんなにもふれたいと思うひとに出会ったのははじめてだ」
ルークはとうとう黙りこんだ。さっさと着替えを済ませると、皇太子の横を通って馬のそばについた。皇太子が手綱を握った。
「なあ、皇太子殿下」
「どうした?」
「おれはまず、おまえと友達になりたい」
皇太子は、ルークにおとなびた微笑を向けて頷いた。「私もだ」
「今回はおれも歩こう。おれはおまえと、対等でありたい」
皇太子は穏やかに微笑して、一つ頷いた。
相手があんまり落ち着いた様子でいると、なんだか、からかいたくなるもので、ルークは小さく笑った。
「また今度、水浴びにこような」
「だめだ!」
望んだとおりの余裕のない声に、ルークは大いに満足して笑った。
「冗談、冗談だよ、皇太子!」
「私をからかうなと、何度いえばわかるんだ!」
「残念、皇太子、やるなといわれてやらずにいられるほど、おれはお利口じゃないんだ!」
ルークは上機嫌に、声高に笑った。
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