第24話

「結局、アイツは何だったんだよ」


「さぁな。だけれどもみた感じ、この世の生物ではなかったな」


 それから彼女たちは、そのまま木船を担いで外に出た。

 そのまま巨大な木の下で木船を寝かせる。


 ゲドーは、ヨルの体の外から出てきていた。


「やっぱり洞窟だから黄泉の国からやってきた化け物」


「そうかもしれない。人間に恨みを持ったまま死んでいった人間。はたまた神様……」


「そうか」


 ヨルは空を見上げた。すっかりと青空が広がり始めている。


「なぁ、ゲドー。僕も死んだらあの狂骨みたいになるのかな」


「それは大丈夫だと思うぞ」


「なぜ、そう言い切れる。僕だってあの化け物たちと同じように人間が嫌いだぞ」


「何故って。だって最強のお嬢が君のことを調伏しているじゃないか」


「あぁ、確かに。言われてみればそうだな」


「だろ。それに、今のヨルお嬢なら大丈夫だ」


「大丈夫って」


「あの大社北高校の人たちは、この姉さんと同じように神様を守ってくれる人がたくさんいる。だからきっと、大丈夫」


「そうかなぁ」


 と、彼女は木船の顔をみる。彼女はグッスリと眠っていた。


「まぁ、そうかもしれないな」


 と木船はゆっくりと瞬きを始める。するとゲドーはおっと、といいそのまま消えていった。

 そして目を開けた。


「あれ……ここは」


「全く。お前はドジっ子だな。まさか、洞窟の中に入って転んでしまうなんて」


 とそんな嘘をついてみる。


「あれ、そうでしたっけ? 何だが私、もっと、恐ろしいものをみたような」


「それはきっと夢だ」


「そうですか。夢ですか」


 そう言って、木船は立ち上がる。


「ねぇ、ヨルさんみて!」


 と木船は指をさす。その先には霧があった。


「あれ、あれさ!」


「あれって、霧がどうしたんだよ」


「いや、違うのです。あれは霧なんかじゃないのです」


「はぁ?」


「ほら、あれ。毛むくじゃらの稀有怪訝じゃないですか」


「だからあれは霧で」


 と彼女はその先をみた。それはただの霧。いや、ただの霧のはずだが。

 こちらを見て大笑いをしている。


(全く何がおかしいのだが)


 そしてその霧は一瞬でどこかに消えていってしまった。


「あっ」


 と木船は寂しそうな声を上げた。


 成程。妖怪というのはこんな感じで、実は身近にいるものなのか。

 それは神様と何も変わらないじゃないか。ヨルはそう思った。

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