第22話


騎士としていつも通り訓練に励んでいたらあっという間に時は過ぎ、休日。今日はジャック卿と買い物に行く日だ。

ただの買い物だ。欲しいものを買うために目的の店を周るだけ。それだけだ。

一緒に行く相手もこちらに好意は持ってくれているとはいえ、私からしたらただの騎士の同僚だ。

それなのに__何故こんなにも頭を抱えてしまうのだろう。


「髪は整えるべきなのか?化粧は?そもそも服は何を着ていけばいいんだ?」


日焼けで赤茶色になったボサボサの髪をガシガシと掻く。

邪魔だと思った場所を家庭用のハサミでその都度自分の手で切っていたので当然切り揃えてなんていないし、セットの仕方も分からない。化粧なんて生まれてこの方したこともない。服も動きやすさ重視だ。

妃になるのならと礼儀や知識をまず先に深めていったが、少しくらいオシャレを勉強するべきだったかと鏡の前の自分を眺める。

こんな容姿だから捨てられてしまったのだろうか。いいや、5年前からこのスタンスは変わっていないのだから見た目だけでそうなったとは考え難い。

それでも要因としてはゼロでは無いのだろう。現にナタリーという女性の顔を眺める彼の目は潤みを帯びていたように見えた。


キリアン王子は常に新しいものが好きだ。最先端のカラクリ、新作のブランド、新規の事業、新味のスイーツ、新品の家具、新鮮な切り花……そして初見の女性ナタリーに、初めての人助け。

きっと私も5年前は目新しく見えたのだろう。セシル・ニールは当時にはかなり珍しい女性騎士だったから。

でもこの5年で珍しさや偏見はかなり減った。それでも表面は5年前とほぼほぼ変わらない。


飽きた__きっとそういうことなのだろう。


中身だけでなく見た目も変わることができていたら展開は変わっていたのだろうか?

顔を合わせる度、数か月に一回、1年に一回だけでも、髪形や化粧や服を変えて王子の元に顔を出していたら……飽きない女だと思ってこちらに視線を向け続けてくれたのだろうか?

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