第19話
「ドゥメルク王国の国内は俺達騎士がしっかり目を光らせてるから基本平和だからな。たまたま不憫な少女を見かけて、しかも助けることができたって流れにはっちゃけちゃったんだろ。」
まるで自分の事のように悔しがる同期をジャック卿が宥める。
今まで騎士の仕事以外で会話をしたことがなかったというのに怒ってくれるのは意外だったし、新鮮だ。
気付かなかったが、いつの間にか昔気質な性格をした騎士は引退し、今の騎士の人達はかなり仲間思いで愉快な性格をした人ばかりになっていた。
それは同期だけではなく先輩や後輩も同じだ。
「セシル、安心しなさい。男なんてこの世にごまんと居る。君のような努力家で礼儀もしっかりとした娘ならむしろ選び放題だ。」
「そうだそうだ!もし不安なら見合いでも何でもセッティングしてやる!俺のカミさんがバックに着いた男だ、二度とお前を裏切らない!補償してやる!」
「お、お見合い!?セシルさんをう、う、裏切らないなんて、そんなの、僕にとっては当たり前ですけど!?」
「おま、誰だって惚れた女を裏切らない当たり前だろ!セシル先輩、次はきっともっと良い男を捕まえられるっすよ!」
そんな彼等の様子を見て何だ何だと一人また一人と仲間の騎士が集まる。
そしてその度に記事の内容になっては王子に怒ったり呆れたりする言葉や、私に対する慰めの言葉や励ましの言葉を投げかけられた。
あの時ほど努力が報われたと実感した日は無かった。私がやってきた事は全て無駄じゃ無かったのだ__
昨日抱いたその気持ちをキリアン王子に打ち砕かれた時、消えてしまいたいと思っていた。
だが私の努力はとっくに報われていたのか……例え一人に壊されてしまっても、直してくれる人が沢山いる。それのなんてありがたいことか。
「みんな……ありがとう。自分勝手で申し訳ないが、これからも同じ騎士として受け入れてくれると嬉しい。」
妃になれなくても、私には騎士の道がある。
元より王子にプロポーズをされる前はずっと騎士で居続け、騎士としてこの国に骨を埋めるつもりだったんだ。今更辞める理由も無い。
頭を下げる私に当たり前だろうと笑いかけてくれる彼等は直視できないほど眩しい。まるで太陽だ。
ふと思い出しジャック卿を見ると、彼はまた澄ました表情をしていたが、こちらをチラリと横目で見てはその度満足そうにしていた。
どうやら私が周囲に対して築いていた壁を一生懸命に壊している姿が愉快に見えているらしい。悪趣味な男である。
そんな男に好意を寄せられてる私も大概なのかもしれないが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます