第18話
「そうだな、今の私はフリーという事になるな。」
「な、なら!僕と次の休みに一緒にお出かけでもどうですか!?」
「おま!抜け駆けすんな!セシル先輩!その、良かったら俺も同行するっす!」
お出かけか、せっかく誤解も解けたのだ。後輩の話を聞きながら身体を動かすのもいいかもしれない。
今の訓練で満足なのかとか、現状の実力チェックをする為に街の運動場を借りた方がいいだろうか?
そんな事を考えつつ、了解の返事をしようとしたが__腕を引かれた事で出た言葉はグエッとヒキガエルの様な声になってしまった。
気配も感じず、あまりにも突然だったので思わず剣を構えかけたが、視界に入った黒い瞳に一瞬でその警戒は消えた。ジャック卿だ。
「セシル、おはようさん。」
「ジャック卿……気配も無く背後に立たれては困る。斬られても文句は言えないぞ。」
「これは失礼。ところでお前さんも周りもかなりご機嫌みたいだが何かあったのか?」
「ジャック!お前聞いてないのか!?」
後輩からの話は中断され、割って入ってきた同期の騎士達がジャック卿に新聞の記事を見せた。
彼は『本当に酷い話だよな、お前もそう思うだろ!』なんて言葉と同時に渡された新聞を眺め『最近の写真技術って凄いんだなぁ』なんて的外れな感想を述べる。
今知りましたみたいな顔をしているが、彼は昨日既に事情を知っているし記事だって普通に同じ物を読んできたのだろう。何となく彼の性格がわかってきた。
「確かに最初は騎士と王子がお付き合いするなんて身分の違いで国民とか国外の人間からの偏見の目もあるし、絶対に苦労するって思ってたから心配だったけど!すんごいキツい騎士の訓練もあったのに勉強まで怠らなかったしあの国王が『是非王子の妃になってやってくれ』って言ったって聞いた時は素直にスゲェって思ったのに!」
「それなのにたった一回男に襲われた少女を守る為に5年も待たせてたセシルを妃にしないとか、そんなの身勝手過ぎだー!」
新聞の内容までは読んでいなかったが、どうやらナタリーという女性との馴れ初めについてもかなり事細かく書いてあったようだ。
運命という単語で埋め尽くされているそれを今更読む気にもなれやしないが、話を聞く限りナンパをされていた町娘をキリアン王子が止めに入り、護衛の騎士と高い地位の圧力で男を追い払ったというのが大まかな流れらしい。これまたよくあるシチュエーションだ。
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