第14話


ジャック卿も私も自分勝手だ。好いている相手が自分ではなく他の人を見てると分かっていても≪構わない≫の一言でまとめてしまうのだから。

ジャック卿が本当に≪構わない≫と思っているのか否かは定かではない。でも、私の言ってる≪構わない≫は本当は≪構う≫のだ。

二番目でもいいとか妃になれなくてもいいとか、そんなのただの強がりだ。

騎士として、弱みを見せてはならぬ立場として培ってしまった意気地でしかない。

≪構わない≫なんて、嫌だ嫌だと駄々っ子になりそうな醜い感情を押さえつけるために取り繕った理性的な薄い包み紙でしかない。

一皮剝けてしまえば感情の赴くままに周囲に当たり散らしてしまうだろう。

彼も同じかもしれないのに、こちらに悟らせない表情をしてくれている。彼なりの気遣いなのか、何重にも包みをしているのかは分からない。しかしそのどちらも心は疲弊するだろう。

今の私が彼にできるのは拒否や否定ではなく彼の勇気ある誠意に対して感謝をすることだけだろう。

例えそれが彼の期待に応えられない可能性もある、形だけのものであっても。


「では、その時になったらジャック卿に声をかけさせてもらおうか。」

「そうしてくれ。まぁ、僕もただお前さんが声をかけてくれるのを待ってるだけなんてことはしないけどな。」

「え?」

「僕は……見てるだけで守った気になって満足なんてしたくないんだ。もう二度とな。だからお前さんに好意を抱いてることはもう隠すことはないし、お前さんの様子が少しでもおかしいと感じたら真っ先に声もかける。正気かと思うだろう?だがそれほど僕はお前さんに夢中なんだ。」


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