第11話
タイトルも言わず、ただストーリー内容だけを垂れ流すその勧め方に違和感を感じる。
相変わらずその表情は愛おしいものでも見ているかのように蕩けていて、頬も心なしか熱を帯びているかのように赤い。
もうとっくに夕日は沈んでしまったというにも関わらずだ。
……一瞬“もしかして”という感情が湧いた。いや、いや、まさか。そんなわけがない。そんな都合のいい話があるわけがない。
それこそロマンス小説に毒され過ぎだ。先程そのせいで痛い目に遭ったばかりじゃないか。変に勘違いをしてはいけない。
もしかして目の前の男はロマンス小説の話ではなく、今この現状の話をしているのか?__なんて。
思わず頬の熱が移り、ブンブンと頭を振ったり冷たい手で覆ったりして熱を逃がそうとする。
しかし考えれば考えるほどじわじわと熱は集まるばかりだ。
彼の紡いだストーリーのヒロインをそのまま自分の事だと受け取ってしまうならば、騎士の男とやらは私を好いている事になってしまう。
そんなのあるわけがない。だってジャック卿はずっと私の事なんてまるで興味が無いかのように接して__と思ったが、ふと思い出す。
5年前。キリアン王子にプロポーズを受ける前。
私はジャック卿と少し話す機会があった。
あれは確か剣の演習の時間で、2人1組になって永遠と模擬戦闘をするというものだった。
しかし演練場はかなり狭いので沢山いる騎士達は一度に使用できない。
だから二手に分かれて片方は演習場で模擬戦闘。残りは倉庫で武器の整理や整備をする事になった。
当時はまだ女の騎士というものに偏見も多く、騎士としてもまだまだ未熟だったので特に年配の男性の騎士からはあまり良い印象を持たれていなかった。
だからこちらが剣を研いだり磨いたりしている姿を見ては女に武器は分からないだろと馬鹿にしてやろうと粗探しをしてる輩ばかりだった……ジャック卿を除いて。
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