第9話
「どんな事にしろ、あまり大袈裟に考えない事だな。大抵の事は時間が経てば何でもなくなってしまうものさ。」
そう言って今度は目元も緩めて笑う。それを確認した途端、一気に身体の力が抜けるのを感じる。
どうやら私は大袈裟に考え過ぎていたようだ。
頭では誰も自分がどうなろうが関係無いと思うだろうと分かっている筈なのに、どうしてか物事の一番最悪なパターンを想像し、そうに違いないと思い込んでしまう。悪い癖だ。
まぁ、その癖のおかげで戦場ではいつも隙無く生き残っていられたのだが。
しかし、そうか、と目を伏せる。
人の噂も七十五日。例えこれから王子の妃になれなかった事に関して周りから何と言われようが、それはその時にしか放たれない言葉に過ぎない。
人の関心なんてあっという間に別の所に移る。今は自分がその対象なだけで、ほとぼりが冷めたら私が王子にプロポーズされた事実すらどうでもいいものになるに違いない。
そう考えるとほんの少しこの先の将来の不安なんてどうでもよくなってくる。
いつか今日の事もネタにして笑える日すら来るのかもしれない。
……受け入れよう。諦めよう。
これからは騎士としての人生を全うしよう。
「ありがとう、ジャック卿。1人の女として落ち込むのは今ここで最後にする。これからは女を捨てて立派な騎士として__」
「一ついい事を教えてやろうか?」
「いい事?」
いや決意の言葉を遮るなよと出鼻を挫かれた事にムッとなったが、ジャック卿がニヤリと不敵に、しかしとても綺麗に笑うので思わず動揺して言葉を待った。
……まるで愛おしいものでも見ているかのようなその表情に少し目を奪われてしまった私は、もしかしたら私が思ってる以上に面食いなのかもしれない。
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