第6話

図星を突かれて思わずカッとなってしまったが、彼の言葉にすぐに冷静になることができた。

促されてもいないのに自然と欄干から足を降ろす。ジャック卿もそれを確認してから同じく降りた。


そのまま二人並んで海を眺める。いつの間にか夕方になっており、オレンジ色の太陽がどんどん海の先に沈んでいく。彼に話しかけられなかったら太陽よりも先に海に消えていったのは私だったのかもしれない。一滴も水には触れていないにも関わらず寒気がしてきた。

ジャック卿の口から“死”という単語が出てきたのを察するに、彼の目から見ても私は今にも身を投げそうな雰囲気だったのかもしれない。

今だからこそ思う。声をかけてもらえて良かった。本当に、本当に。


「それにしても、現国王すらも『身分なんて関係ない!是非妃に~』と持ち上げていた女をフってまでどこにでも居そうな若いだけの女を選ぶなんてな。未来の王様って奴は優秀とは聞いてたが意外と馬鹿なんだな。」

「口を慎め、ジャック卿!不敬罪で捕まりたいのか!」

「誰も聞いちゃいないさ。」

「私が聞いているではないか!それに、彼は……キリアン王子は馬鹿な男などでは決して無い!」

「いいや、馬鹿だね。お前さんを一度裏切った時点で、そいつは既に大馬鹿者さ。」


何もかも知っているかのようなスカした態度が気に入らない。

本当に不敬罪として処罰してもらおうかと考えたが、自分以外に見ている人間がいないのは事実。言ってないと言い張られれば証明なんてできないのでやめた。


「誰も聞いてないついでに質問したいんだけどよ、お前さんはあの男のどこに惹かれたんだ?王子って肩書以外で。やっぱ顔?」

「本当に失礼な奴だな。いいか、キリアン王子はとても男らしい方なんだ。私のような一騎士にも目にかけてくださったし、実力も努力も認めてくださった。相手が平民でも女性に優しいのだ。あとは……そうだな、チェスがとても強い。チェスが強いというのは戦略を練るのが上手いということだろう!あとは……そう!ダーツとかビリヤードとか小動物の狩りとかも得意なんだ!」

「ここまで優しいなんて曖昧なもの以外に内面の誉め言葉が出ない時点で御察しだな。お前さんは本当にあの男自身に惚れたのか?それともあの男の遊び方に惚れたのか?」

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