友愛を求める少年の話

st0. とある噂

 極東の島国、その外れに存在する。いや、存在しないはずの島がある。らしい。

 

 近づいても見つけられず地図にも載っておらず、政府でさえその実情を知らないと言われている島。

 

 紅い霧に包まれた秘島、『紅霧島あかぎりじま』と呼ばれるその島についていつからかこんな話が出回った。

 

 冒険家が言った「あの島は危険な島だ」と。

 其れを聞いて肝試しに向かった人は泣き叫んだ「あの島には化け物が住んでいる」と。

 しかし、噂を聞いてその島を死に場所に選んだ人は帰ってこなかった。「私は彼らに助けられた。家には帰らない」と言葉を残して。

 

 数々の証人とされる人や噂話が跋扈し、人々はどの話が真実なのかを議論し合い、盛り上がりを見せていたが、いつしかその島の話は話される事が無くなった。誰も彼もが興味を失っていた。結局、ただの都市伝説止まりに過ぎないと。

 けれど、オカルトに興味がある人や死に場所を求める人々の話題には時々出てくる。いいや、あれは本当の話だと。

 

 かく言う僕も興味を持ってしまった。

 

 噂によれば首都郊外にある最南の港。そこに手がかりがあるらしい。善は急げ。僕は直ぐに準備を始めた。

 

 行き着く先が終わりなのかはたまた幸せなのか分からない。けれど僕にはそれしか残されていない。

 少なくとも今のまま生きていくよりか幾分とましだろう。

 さて。行き着く先は幸せな明日か。それとも終着点か。

 もう覚悟は出来ている。

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