第56話 義弟
黒焦げになった魔導具(?)
放っておく訳にもいかないので
どこか懐かしい魔力の波長。
その光が収まったとき、現れたのは――よく見知った、しかし見たことのない顔。
柔らかな金髪は光り輝きながら軽くウェーブを描き。瞳の色は私と異なる緑色。切れ長の目はどこか冷たい印象を与えてくるけれど、『彼』がとても心優しい人間であることは私がよく知っている。
四年の歳月によって見慣れぬようになった顔。
四年経ってもなお見間違えるはずがない顔。
――レオナルド・リインレイト公爵子息。
いや、すでにもう公爵家を継いだのか。
レオナルド・リインレイト公。
私の、義理の弟だ。
◇
リインレイト公爵家には私しか子供がいなかった。
この国では女性が爵位を継承するのはかなり難しいし、私は早々に『王太子の婚約者』となってしまったので、リインレイト公爵家の後継ぎとして分家から連れてこられたのがこのレオだ。
なのでレオは私の義理の弟で、ちゃんとした血縁関係もあるけれど……本物の姉弟ではないので結婚も可能だったりする。
…………。
いやいや。
いやいやいや。
なにが『結婚も可能だったりする』だ私? 可能であるからどうしたというのだ私? ここ数日連続で求婚され続けて頭がピンク色になっていないか私? 『きっと私の周りのイケメンはみんな私のことが好きなのよ!』系の思考に陥ってないか私?
「……
死屍累々。
いや、死人はいないので気絶累々な獣人族を見渡して、レオは胡乱げな目を私に向けてきた。
「レオ。久しぶりの再会なのにお姉ちゃんを疑うのはどうかと思うわよ?」
「義姉上以外の誰がこのような惨劇を演出できるのですか?」
「…………ミアとか?」
「残念ですが。ミアイラン嬢は義姉上に比べれば幾分常識的な人物です」
ミアと比べられてしまった。ミアの方が常識人だと断言されてしまった。あのミアと。あのミアよりも。一体私を何だと思っているのか弟よ? お姉ちゃんは悲しいです。しくしくしく。
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