第2話:ネイリスト、異世界へ転生する!

私はぼんやりとした意識の中で、自分が暗闇の中にいることに気づいた。周囲には深い静寂が広がり、心細さが胸を締め付ける。そのとき、淡く光る謎の人物がゆっくり近づいてきた。


「あれ、ここはどこ……?」


「気が付いたかい?」


「私、死んだんじゃ……」


「そうだ。ここは死後の世界と現世の間。私はその均衡を保つ神だ。」


「神様……?」

淡く光るその人物は神様だと名乗った。にわかには信じられないが私はなぜかその言葉がすっと入ってきて、この不思議な状況も受け入れられることができた。


「君は小さな命のために自らの命を犠牲にした。その行動は賞賛に値する。だから特別なチャンスを与えることにした。」


「特別なチャンス……ですか?」


「君が今までの人生で沢山の人を救ってきた。そのご褒美だと思えばいい。」


「私……誰かを救ったことなんて……」


「君のネイルで多くの人が救われていた。君はただ人を美しくしていただけじゃない。その人たちに自信と喜びを与えた。それはとても尊い事なんだよ。」


「!」

その言葉に涙が溢れた。自分が施術してきたネイルが人の力になっていたことを知り、思わず笑みを浮かべながら泣いた。


「よかった……私の人生、無駄じゃなかったんだ……。」


「そうだよ、君の人生は人々の感謝と笑顔でいっぱいだった。さあ、結城亜莉子。君に新たな人生を与えよう。新しい世界で生まれ変わるか、現在の知識と技術を持ったまま転生するか、どちらかを選びなさい。望むなら特別なスキルも与えよう。」


「特別なスキル……ですか?」


「そうだ。ただし、そのスキルを得る代わりに過酷な挑戦と試練が待ち受ける。ゼロからやり直すならリスクはないが、どうする?」

突然の選択に私は一瞬戸惑ったが、すぐに決意が固まった。


「私は……ネイルがしたいです。例え生まれ変わっても、転生しても私はネイリストになりたい!」


「ネイリストの道を選ぶのだね。よかろう。ならばネイルに関する特別なスキルを与え、君を新しい世界に転生させよう。ただし、先も述べた通り、君の人生には過酷な挑戦と試練が待ち受ける。それでも、その道を選ぶかね?」


「はい、ネイリストになれるならどんな試練だって超えてみせます!」


「いい返事だ、結城亜莉子。新しい世界で君がネイリストとして生きていけるよう願っているよ。」

神様の言葉が終わると同時に、私は眩い光に包まれて再び意識が遠のいていった。



––––君の新しい人生に幸多からんことを。

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