第38話「夏祭り④ 綺麗なもの」


 

(彩華)「もうそろそろ花火の時間だ」

(修)「そうだね。じゃあ、移動しよっか」

(彩華)「移動ってどこに?ここからでも見えるでしょ」

(修)「見えるけど全然人が来ない場所があるんだ」

(彩華)「そうなんだ。じゃあ、そこ行こうよ!」

(修)「よし、行こう」


 俺たちはその場所に向かった。


(彩華)「なんでそんな場所知ってるの?」

(修)「小さい頃俺と奈津美とか美咲の家族はその場所で見てたんだ」

(彩華)「へぇ~、そうなんだ。」


なんだか少し彩華が不機嫌になった気がした。


(修)「彩華なんか怒ってる?」

(彩華)「おお〜、よく気づいたね」

(修)「え、えーっと俺は何かしてしまいましたか?」

(彩華)「今ってさ」

(修)「はい、」

(彩華)「私とのデートなわけですよ」

(修)「はい、」

(彩華)「そこで他の女の名前が出てきてたからちょっと妬いちゃっただけ」


 え、なにそれかわいい。でも今の質問に奈津美とか美咲の名前を出さずにどうやって答えるのが正解だったんだ?


(彩華)「まぁ、でも花火を見れるスポットに期待して今回は許してあげる」


 俺は一命をとりとめたらしい?


(修)「ありがとう。次から気をつけるよ」

(彩華)「うん、よろしい」


 そうしていると花火のスポットに着いた。


(修)「着いたよ」

(彩華)「本当にここから見えるの?」

(修)「見えるんだって、あそこのベンチに座ろう」


 俺たちはベンチに座って花火が上がるのを待った。そうしていると近くから花火のアナウンスが聞こえた。


(アナウンス)「それでは皆さんお待ちかねの花火の時間です。いきますよ〜、3、2、1、0」


 そのアナウンスとともに花火は上がった。


(彩華)「ほんとだ。凄く綺麗に見える!」

(修)「でしょ〜」

(彩華)「ありがとう修くん」


 そう言って彩華はニコッと笑った。とても可愛くて綺麗で俺の視線は花火にはまったく向かなかった。


(彩華)「どうしたの?修くん」

(修)「あ、えなにが?」

(彩華)「だって、全然花火見てないからさ」

(修)「いや、べつになんでもないよ」

(彩華)「あ、わかった〜、私に見惚れてたんでしょ?」

(修)「まぁ、そんなところかな」

(彩華)「え?」


 彩華はものすごく顔が赤くなって恥ずかしそうにしている。普通の花火以上に綺麗なものを俺は今見ているのだ。

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