第30話「もう1人の幼馴染」


 俺と奈津美にはもう1人幼馴染がいた。山下美咲という女の子がいた。美咲は少し気が強い女の子だった。たまに喧嘩をすることもあったが俺たちは3人一緒にいることが多かった。中学生の時までは。そして俺は美咲のことが好きだった。そして中学校の卒業式の日に告白する決心をした。その日はドキドキバクバクで学校に向かったのを今でも覚えている。だが学校に着いても美咲はいない。奈津美に聞いてもその日は親と一緒に来たらしく美咲のことはわからなかったそうだ。でもなんだかんだ式に間に合うように来ると思っていた。しかし卒業式にも来なかった。だから俺は美咲に告白することができなかった。多分俺は今日告白しなかったら一生告白なんてできないんだろうな〜と思っていた。なぜなら俺がヘタレだからだ。自分で言うのは悲しくなるが………その日の帰りのとある知らせで俺はそんな事がどうでもよくなる。


(母)「ねぇ、修」

(修)「なに?」

(母)「まずは卒業おめでとう」

(修)「ありがとう」

(母)「これから話すことはとても大切な話だから真剣に聞いてほしい」

(修)「うん、わかった」

(母)「実は今朝美咲ちゃんが交通事故にあったの

。車の信号無視らしい」

(修)「え?え、え?」


 俺はその時言葉では言い表せない感情だった。告白できなかった残念さなんていっきにどうでもよくなった。


(修)「それって本当なの?」

(母)「本当よ」

(修)「生きてるの?」

(母)「そこまでは分からない」

(修)「そっか」


 それからその事を知った俺は美咲の家に向かった。走って向かった。今になって考えると美咲は病院にいて家族もそれに付き添ってるだろうから家に行っても誰もいないのにバカだなと思う。でもその時はそんな事を考えられるほど冷静ではなかった。そして美咲の家に着くと家の前に奈津美がいた。きっと奈津美も親なのか誰からかその話を聞きつけて来たのだろう。そして奈津美が振り返って俺の存在に気がついた。


(奈津美)「修!丁度いいところに来た。今日はせっかく卒業式だから美咲も入れた3人で写真撮ろうよ」


 奈津美は知らない様子だった。


(修)「それは出来ない」

(奈津美)「なんで?」

(修)「美咲は………」


 俺は泣いていた。ボロボロと涙が落ちてくる。


(奈津美)「どうしたの修!?話聞くからそこ座って」

(修)「実は美咲交通事故にあったらしい」

(奈津美)「え?」


 奈津美の顔が真っ青になった。


(奈津美)「それって本当なの?」

(修)「母さんが言ってたからおそらく本当だと思う。」

(奈津美)「そんなの………、美咲は生きてるの?」

(修)「分からないって」

(奈津美)「そっか、どうしよう?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る