第24話「もし1位だったら………」


 彩華が図書室に入ってきた。ものすごい不機嫌そうだった。


(彩華)「ねぇ、修くん」

(修)「はい」

(彩華)「渚に勉強教えてもらってるんだって」

(修)「そ、そうだよ」

(彩華)「なんで私に頼らなかったの?」

(修)「いや、もともと誰にも頼るつもりなくてそんな時に渚さんが声かけてくれたからせっかくならと思って」

(彩華)「前回学年1位の私を頼ってほしかったな〜」

(修)「ごめん」

(彩華)「まぁ、いいや。そんな事話しに来たわけじゃないし」

(修)「そ、そうなんだ。じゃあ、要件は?」

(彩華)「私が今回も1位とったら1つだけお願いきいてくれない?」

(修)「そんなの1位にならなくても俺に出来ることならするけど」

(彩華)「いや、多分今だとうまくいかないから」

(修)「そう?まあ、いいよ」


 俺が彩華のお願いを承諾すると嬉しそうに帰っていった。それにしても彩華はなんのお願いをしたかったのだろうか?まぁ、いっか。そして俺は家に帰ってからも勉強をした。高校受験の時より勉強した気がする。



 ✴✴✴✴✴✴✴✴✴



(彩華)私は今回のテストで1位をとったら修くんに真剣に告白する。その時に絶対YESと言わせるんだ。その日も次の日も私は勉強をした。前回もめちゃくちゃ努力してやっとの思いで渚から1位を奪取した。だから今回も絶対に1位を取ってやるんだ。私はそう意気込んでペンを握りなおした。



 ✴✴✴✴✴✴✴✴✴✴



(渚)私は数学の教科書を図書室に忘れてきてしまった。図書室に入ろうとすると聞き馴染みのある声が聞こえてきた。彩華と修くんだった。え、えーーー。彩華が修くんにお願いって決まってるじゃん。絶対告白だ。その時には私はすでに玄関に向かって早歩きを始めていた。もちろん数学の教科書は図書室に置いてきたままだ。あの空気に割って入ってまで取るものでもないと思った。へ、へぇ~、あの2人やっとくっつくんだ。良かったと思う気持ちも無くは無いけどなんだか胸の奥がモヤモヤする。なんでなんだろう?私が修くんの事………ないない。絶対ない。多分ない。



 ✴✴✴✴✴✴✴✴✴



 俺はそれから毎日放課後に図書室で渚さんにしばかれた。そのおかげで俺は万全の状態で試験当日を迎えることができた。渚さんには感謝しかない。試験は4日間ある。1日目は苦手科目で前回欠点の古典だった。でも渚さんが教えてくれたところがドンピシャにでたおかげで手応えはかなりいい。いや、めっちゃいい。


(修)「渚さん!」

(渚)「ほいほい、どうした」

(修)「渚さんに教えてもらったとこ出たから今回は結構いいかもしれない」

(渚)「それは良かった。でもまだテストは終わってないからあと3日頑張るよ」

(修)「うっす、師匠!」

(渚)「今日も図書室行くよね?」

(修)「もちろん!」


 そして俺たち今日も今日とて図書室で勉強に励んだ。



 

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