第21話「あいつを見つけれるのは俺だけ」


 俺は先生に怒られているなんて御構い無しに走り出した。先生の怒る声は聞こえる。


(幹也)「先生、奈津美の事1番分かってるのはあいつなんで」

(渚)「そうです。だから許してあげてください」

(幹也)「多分この場で奈津美を見つけれるのは修だけですから」


 

 ✴✴✴✴✴✴✴✴



 俺は走りまわった。なんで自分がこんなにはやいスピードでこんなにも長い時間走れるのか分からなかった。


「奈津美!奈津美!どこだ?いるから返事してくれ」


 そうやって俺が走っていると泣き声が聞こえた。あたりを見まわしてみると奈津美が体育座りで泣いていた。


(修)「奈津美大丈夫か?」

(奈津美)「し、じゅうー」


 そう言って奈津美は俺に抱きついてきた。それからしばらく奈津美は泣いていた。奈津美が泣きやむまで待った。


(奈津美)「ごめん」

(修)「何があったんだよ」

(奈津美)「実はスマホのマップ見てたんだけどそしたら充電切れちゃってモバイルバッテリーも持ってなかったから充電できずに迷子になってたの」

(修)「だからみんなの連絡にでれなかったのか」

(奈津美)「うん、ごめん」

(修)「もういいって、みんなのとこに行こう。みんな待ってるよ」

(奈津美)「なんか、この感じ懐かしいね」

(修)「何が?」

(奈津美)「覚えてない?昔花火大会で迷子になったときも私を見つけてくれたのは修だったよね」

(修)「それ小学生の時のやつだろ」

(奈津美)「そうそう」

(修)「懐かしいな」

(奈津美)「あ、あの時みたいに手繋いでよ」

(修)「何歳になったと思ってんだよ」

(奈津美)「修が手繋いでてくれないと私また迷子になっちゃうよ」

(修)「仕方ないな」


 俺は奈津美に手を差し出した。奈津美は俺の手を握った。そして俺が歩き出そうとすると奈津美は俺の手を引っ張った。


(修)「おい、なにす……」


 その瞬間俺が今まで感じたことの無い感覚をほっぺたに感じた。柔らかくて温かい感覚を


(修)「お、お前何を!?」

(奈津美)「ん?お礼のキス」


 奈津美に対してこんなにドキドキしたのは人生で初めてかもしれない。


(奈津美)「さ、帰ろう」


 そう言って奈津美は俺の手を引いた。


(修)「おい、待て」

(奈津美)「なに?」

(修)「奈津美が俺の手を引くと俺まで迷子になるだろ」

(奈津美)「たしかに」


 俺たちは何とかみんなの待つホテルに戻ることができた。


(渚)「奈津美ちゃん大丈夫?」

(幹也)「奈津美大丈夫か?」

(彩華)「坂下さん大丈夫だったの?」


 みんなが奈津美の事を心配してくれていた。


(奈津美)「ありがとう。でも心配かけてごめん」

(渚)「全然大丈夫だよ」

(幹也)「戻って来れて本当に良かったよ」


 俺は先生達からめちゃくちゃ褒められた。さっきまで怒っていた先生が笑顔だ。


(渚)「やるじゃん、修くん」

(修)「まぁ、ガキの頃からずっと一緒だっただからな」

(先生)「さぁ、せっかくのところ悪いが藤白と神田は集合な。さっきの説教の続きだ」

(修)「そ、そんな〜」


 俺と彩華はまた学年主任と担任にみっちり怒られた。


(幹也)「はぁ〜、かっこつかねえな」

(渚)「まぁ、いいオチだ」

(奈津美)「修らしいわ」


 せっかくヒーローになったんだから許してくれよ

 

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