第8話「1回でいいとは言ってない!」


 今日登校して俺が席に着いたとあきらかに不機嫌な神田さんが近づいて来た。


「おはよう、神田さん」

「おはよう修くん」


 神田さんの声が暗い。俺は何か怒らせるような事をしてしまったのだろうか?まったく分からない。神田さんはボソッとつぶやいた。


「今日昼休み特別棟の大教室来て」

「わ、わかった」

「私怒ってるから来なかったら許さないよ」


 あ〜、終わった。俺の青春終了のお知らせかもしれない。俺が答えを出すのが遅くて痺れを切らしたとか?それで彼女の立候補取り消したいなんて言われたらどうしよう?この感じ何にしろヤバイよなこれ、


「おっす、修!」

「おはよ、幹也」

「どうしたんだよ修、朝から元気ねえな」

「うん、俺は神田さんを怒らせてしまったらしい」

「おう、そうかお疲れ!」


 それだけ言って幹也は自分の席に戻っていった。親友が本気で悩んでいるというのにそれだけかよ。なんて冷たいやつだ。怒っている原因さえ分かれば謝れるんだけどそれが分からない。そうだ!渚さんなら何か知ってるかもしれない。そう思った俺は朝のショートホームルームが終わった時に聞いてみることにした。


「渚さんおはよう」

「おはよう」

「なんか神田さんが怒ってるらしいけど何か知ってる?」

「え?彩華怒ってるんだ。私の前では普通だったから分かんないや」


 ダメだった……


 渚さんが知らないとなるといよいよ頼る人がいなくなった。自分で考えるしかない。


 ✴✴✴✴✴✴✴


 俺は午前中の4限全てを神田さんが怒っている原因を考えるのに費やした。そのせいで英語で当たったときは「ぼーっとするな!」って先生に怒られてしまった。午前の4限では分からなかった。俺と接するとき以外はいつも通りの神田さんだった。そして昼休みがきてしまった。


「修!昼は学食か?」

「ごめん、学食だけど行かなきゃならんところがあるから先に行っといてくれ」


 俺は幹也にそれだけ言って特別棟の大教室に走って向かった。俺が教室を出る時に神田さんの姿はなかった。きっともう行っている。怒っているのに待たせてはならない。そう思って全速力で向かったが俺が着いた時には神田さんが1番前の席の机に座っていた。神田さんは普段机に座るような事はしないのに今日は机に座っている。恐らくそうとう怒っている。


「来てくれたんだ」

「はい」

「そこに正座して」

「はい」


 俺は言われるがままに神田さんの前に正座した。


「午前中はなんで私が怒っているか考えてたみたいだね。何かわかった?」

「いえ、わかりませんでした」

「はぁ〜」


 神田さんは大きくため息をついた。


「1回でいいなんて言ってない」

「なんのことでしょうか?」

「だから私の事彩華って呼んだのショッピングモールの時の1回じゃん。どんな時も彩華って呼んで」


 確かに、俺は彩華さんの事を彩華さんと呼んだのはあの1回だけだった。


「ごめん、彩華さん」

「うん、よろしい」

「許してほしい?」

「許してほしいです」

「ハグで許してあげる」


 は、ハグ!?そう驚く俺の事は御構い無しに彩華さんは両手を広げた。ちょっと待ってくれーーー!俺はそれから意を決してハグをした。女の子とハグしたのなんて初めてだ。あったかいしいい匂いだし何とは言わないが柔らかい。


「うん、許してあげる。あと彩華さんじゃなくて呼び捨てで彩華で!」

「わかったよ彩華」

「よし、はやくお昼ご飯食べないと昼休み終わっちゃう」


 そうして彩華は俺の手を引っ張って学食まで行った。もちろんみんなから注目されたが今はそんな事よりまだハグの余韻に浸ってしまったている自分がいた。


(彩華)修くんとハグをしてしまった。私は修くんにこの顔は恥ずかしくて見せられないので彼の手を引いて学食まで行った。正直まだハグの事で頭がいっぱいだけど……、



 ✴✴✴✴✴✴✴


 俺と彩華が手を引いて学食に入って来たのを渚さんが見ていたらしく5限以降は質問攻めだった。


「ねぇ、彩華と何があったの?絶対何かあったよね?」

「別に何も無いって」


 彩華さんとハグしたなんて言えるわけないだろ!


(渚)絶対何かあった。だって彩華のあんな顔初めて見たもん。まぁ、言えないような事をしたってことだけはわかった。



 後書き


次回から修学旅行編です!

お楽しみに


 あと星200個作品フォローワー1000人目指してます。よろしくお願いします!


 


 


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る