第5話「下の名前で呼んでほしい神田さん」

 みんなでお店を探している時に僕のスマホに通知が来た。神田さんからだった。


「許してほしい?」


 許すも何もなくない?とか言ったらどうなるか分からない。だからもちろん許してほしいと返したさ。そしたら


「坂下さんだけズルい」


 そう来た。奈津美がズルい?どういう事だ?


「私も下の名前で呼んでほしい。そしたらこの件は許してあげる」


 神田さんを下の名前で呼ぶ事なんて出来るのか?だって奈津美は家が隣の幼馴染で保育園から高校まで一緒の家族みたいなものだかな〜、それに比べて神田さんとは実質この前初めて喋ったみたいなものだしそれなのに下の名前で呼ぶだなんて


 そう俺が悩んでいるとまた通知が来た。


「はやく!はやく!はやく!」


 そうせかさないでくれーーーー!!!


 でも覚悟を決めなければならないのか……


「さ、彩華さんは何食べたいの?」


 かぁーー、顔が熱くなるのが分かる。呼んでしまった神田さんを彩華さんって思っていたより恥ずかしい。



 *******


 (彩華)し、修くんが私の名前を呼んでくれたぁー!正直そんなに期待していなかった。自分から名前で呼んでと言ったのにいざ彩華って言われるとめっちゃ照れるぅーーー、自分でも顔が熱くなっているのが分かる。



 (渚)え、修くんが彩華の事名前で呼んだ!?急に何があったんだ?一緒帰った次の日は普通に神田さん呼びだったはず、それに2人のこの反応をみる限り今初めて名前で呼んだ。この2人初々しい〜、まじでこのカップリング推せるーー!でもこっちの幼馴染も捨てがたい。さぁ、どう動く?



 (奈津美)修がいきなり神田さんを下の名前で呼んだ!?いきなり何があったんだよ!私の知らないところで神田さんは修との距離が縮んでいる。幹也の言う通りもたもたしてると本当にとられちゃう。


 場の空気が数秒間硬直した。するとそれを神田さんが打開した。


「わ、私は今はラーメンって気分かな〜」

「奈津美と渚さんもラーメンでいい?」


 俺もそれに乗った。


「私は賛成!奈津美ちゃんはラーメンでいい?あれ?聞こえてない?おーい奈津美ちゃん?」

「あ、えうん大丈夫」


 そうして俺たちはラーメン屋に向かうことにした。しかしその間俺たちの間で会話が無かった。そんな少し気まずい空気の中神田さんがお手洗いに行くと言ってそれに渚さんもついていった。俺と奈津美は2人でベンチで待つことにした。な、なぜだろう?奈津美と一緒にいるのになんだか気まずい。俺はこの空気を耐える事ができない。


「奈津美なんか体調悪い?」

「え?全然大丈夫だよ」

「そう?さっきから元気ないけど」


 「それは誰のせいだと思ってるのよ」

私は修に聞こえない声でボソッとつぶやいた。


「ごめん、ちょっと考え事してただけ」

「俺が相談に乗れることなら話聞くよ」


 (奈津美)なんでこんな時に優しいのよ。


「もし、私が相談したら解決出来るように最善を尽くしてくれる?」

「うん、最善を尽くすよ」

「じゃあ、聞くけどさ」

「うん」

「なんで急に神田さんの事下の名前で呼んだの?」


 その質問に俺はすぐには答えられなかった。







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