第四章 好きな女が指輪を欲しがったので、バイトを始めたんだが
あれから、一週間が過ぎた。
俺は、早朝に新聞配達、部活が終わったらコンビニとバイトを必死に頑張っていた。
朝4時に起き、5時から6時まで新聞配達をして、朝食も、そこそこに学校へ、放課後は、部活。
部活が終わると超特急で帰宅し、一旦、着替えてコンビニに向かい、夜7時から10時までアルバイト。
クタクタになりながら帰宅すると、もう夜の11時だ。
それから、風呂に入って飯も食わずに、ベッドに倒れ込み睡眠。
あと、どのくらい、このハードなスケジュールをこなせば、23万貯まるのだろう?
俺……身体、持つかなー?
いや、水泳で鍛えた身体。
何より、有美の喜ぶ姿が見たい。
有美は、俺がバイトをしているなんて知らない。
最近、疾風のように帰る俺を不審に思っているが。
「誠。今日さ、カラオケに行かない?」
「悪ぃ、俺、用事があるんだ。」
バタバタと帰る準備をしている俺に、有美は、少し寂しそうに言った。
「今日は、部活が休みだから、カラオケに行きたかったのに。」
「あ〜、ごめん!また、今度な!じゃあ、俺、急ぐから!」
俺は、猛ダッシュで教室を飛び出した。
バイトしているなんて、有美には、言えない。
内緒で、金を貯めて、内緒で指輪を買って、有美をびっくりさせてやるんだ。
『えっ?この指輪の為に、バイトをしてたの?誠……大好き!!』(妄想)
「ウヘヘ……。なんてな。」
俺は、一人で勝手に妄想して、ニヤけていた。
翌日。ヘロヘロになりながら、教室に入ってきた俺に有美が話し掛けてきた。
「誠……大丈夫?どこか身体の調子でも悪いんじゃない?顔色悪いよ。」
「何?!顔が悪いだと?!それは、元からだ!」
あまりの疲労に、俺は、耳まで、おかしくなったようだ。
倒れ込むように、自分の席に座った俺に近付き、有美は、少し怒ったように言った。
「最近、変だよ?いつも一緒に登下校してたのに、朝に迎えに行ったら、もう学校へ行ったって言うし、帰りは、部活が終わったら、速攻に帰ってしまうし。なにか隠してる事あるでしょ?」
疑いの目で見つめる有美に、俺は、机に、グターとなりながら、言った。
「別に、なんもないよ。ただ寝不足なだけ。」
欠伸をしながら、そう言った俺に、有美は、少し目を伏せて、こう言った。
「私に、隠し事はしないでね。」
俺は、お前の欲しがっている指輪の為に、バイトをしているんだー!!
なんて、言えるわけないだろ。
待ってろよ、有美。
俺、頑張るから。
頑張れーーー!!俺ーーー!!
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