第三章 本当に好きな女が出来たと思ったら、思いきりフラれたんだが




ベッドの上に寝転がり、落ち込んでいた俺は、勢いよく階段を駆け上る足音を聞いて、怒鳴った。

「優子!静かにしろっ!」

俺の怒鳴り声と同時に、部屋のドアがバンッと、勢いよく開き、俺は、驚いて飛び起きた。

「誠ーーー!!」

「有美……?」

荒い息を吐き、そこに立つ有美の姿に理解出来ず、口を開けたまま、見つめる俺の側に、有美は、ドカドカと荒く近付いてくると、ベッドに居る俺の両肩を力強く掴んだ。

「あんたねー!どうして、そう早とちりなわけ?何で、人の話、最後まで聞かずに帰っちゃうわけ?」

俺の顔をキッと睨むように見つめ、有美は、そう怒鳴った。

「あっ……えっ……と……。なんで、ここに、有美がいるわけ?」

「あんたが勘違いして、帰ったからでしょ!」

そう怒鳴ると、有美は、そのまま俺をベッドの上に押し倒し、俺の身体の上に跨った。

「お、おいっ!有美!」

慌てて起き上がろうとした俺の肩を強く押さえると、有美は、瞳を震わせた。

「誰も、誠の事を嫌いだって言ってないでしょ?」

「だって、お前……恋愛対象にならないって。」

戸惑う俺に、有美は、言う。

「今まで、幼なじみとして過ごしてきたのに、いきなり恋人同士になんて、なれないでしょーが。」

「俺は、なれるけど……?」

「まずは、お友達から始めましょ……って言おうとしたのに、誠ったら、魂が抜けたみたいに帰っちゃうんだもの。」

眉を寄せ、見つめる有美の瞳は、今にも泣き出しそうだ。

「……なんで、有美がそんな顔をするんだよ。泣きたいのは、俺の方だよ。」

俺が言うと、有美は、ハラハラと泣き出す。

「誠の鈍ちん……。私だって、誠の事が好きなのに、全然、気付いてくれないんだもの。」


フラれたと思っていたのに、突然の愛の告白?



女の気持ちは、分からん。


「みんなから、ラブレターもらって、喜んじゃって……。そんな誠を見てたら、腹が立ったんだもの。私だって……ヤキモチ妬くもの。」



か……可愛い♡


俺は、上体を起こし、泣いてる有美の身体を抱きしめようとした。

その時、下の階から優子の声が響いてきた。

「有美ちゃん、夕飯、食べていくでしょ?今日は、有美ちゃんの大好物のオムライスだよ〜ん。」

それを聞き、素早く俺から離れると、有美は、明るい口調で応える。

「食べる食べる〜。」

パタパタと早足で、俺の部屋を出て行く有美の後ろ姿をやるせない気持ちで、俺は、見つめた。



ほんと……女って、分かんねぇー。

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