第三章 本当に好きな女が出来たと思ったら、思いきりフラれたんだが




俺は、あてもなくフラフラと街中を歩いていた。

空は、こんなに晴れているのに、俺の目に映る景色は、灰色だ。


思えば、俺は、ずっと有美が好きだったんだ。

モテない男の側に居て、優しく微笑んでいたのは、有美じゃないか。

なんで、気付かなかったんだ?


ー誠は、鈍いから。ー


そうか。そういう事か。

ほんと、俺って鈍いよな。

舞は、確かに綺麗だけれど、あれは恋愛ではなくて、憧れだったんだ。

それを恋愛だと、勝手に勘違いしていたんだ。

しかも、舞は、俺の恋心を笑いものにしようとした。

あんなのいくら綺麗でも、悪女じゃないか。

それに気付かせてやろうと、有美は、警告していたのに。

俺は……俺は……。


俺って、バカ。

やっと、自分の本当の気持ちに気づいたのに。

思いきり、フラれてやんの。

お笑い種だぜ。

きっと、天罰が下ったんだな。


やっぱり、モテない男は、モテないままだ。




「あら?矢崎くんじゃない?」

その声に、そちらを見た俺は、ドキッとなる。

舞だ。

舞は、俺の方に駆けて来ると、少し寂しそうな声で言った。

「手紙……読んでくれた?どうして、LINEしてくれないの?私の事、嫌い?」

一度に、幾つも質問するな!

「手紙なら……捨てたよ。」

「えっ?捨てた?何でよ?!酷いじゃない。」

眉を寄せ、そう言った舞に、俺は、冷静な気持ちで、こう言った。

「高嶋さん、彼氏いるんだよね?俺をからかって、手紙、渡したんだろ?」

普段なら、とても、こんな事は言えない。

だが、冷静な俺は違う。

そうだ。元はと言えば、こいつのせいだ。

八つ当たりだと思われてもいい。

舞は、少し困ったような顔で、息をついた。

「何だ……知ってたのね。」

何なんだ?この女……。こんな女に恋焦がれていたなんて、今までの自分が恥ずかしい。

「高嶋さんって……顔は、綺麗だけれど、性格は……とっても、ブスですね。」

「はぁ?あんたに、そんな事、言われたくないわよ。」

「一条くんにも、そんな口を聞くんですか?」

「まさか……。」

「……でしょうね。ほんと、性格ブスだ。」

俺は、そこまで言うと、舞の横を通り過ぎた。



家に帰った俺の顔を見て、優子が声を掛けてきた。

「何よ、お兄ちゃん。浮かない顔しちゃって。……フラれたの?」

「フラれたんじゃなく、俺がフッたんだ。」

俺の言葉に、優子は、キョトンとした顔をする。

「優子……。性格ブスにだけはなるなよ。」

真面目な顔で、そう言った俺に、優子は、黙って頷いた。


有美には、フラれてしまったけれど、何だか、スッキリした気分だ。


フラれた……?





そうだ……!俺、有美にフラれたんだー!!

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