第三章 本当に好きな女が出来たと思ったら、思いきりフラれたんだが
次の日。
日曜日で学校が休みで、俺は、一人公園に来ていた。
「明日……学校、行きたくねぇな。」
呟いた俺は、目の前に人影ができ、顔を上げた。
白いワンピース姿の有美が立っていた。
「はい。」
有美は、二本持ったアイスキャンデーを一本、俺に差し出した。
「あっ……ありがとう。」
「どういたしまして。」
差し出されたアイスを受け取った俺に、有美は、無表情で、そう言うと、ベンチに座る俺の横に静かに座った。
しばらくの沈黙が続き、俺は、口を開いた。
「昨日は……ごめん。」
俺が謝ると、有美は、アイスを食べる手を止めた。
「別に……いいけど。」
一言、そう言うと、再びアイスを食べ出す有美。
「まだ……怒ってる?」
顔を覗き込むように言う俺に、有美は、少し怒ったように言う。
「もぉー!アイス溶けてる!」
「あっ……やべぇ。」
俺は、慌てて、溶けかけているアイスを頬張る。
俺達は、しばらく黙って、アイスを食べるのに集中した。
アイスを食べ終わった俺は、再び有美の方に顔を向けた。
「有美……。」
呟く俺に、有美は、呆れたように息をついた。
「誠って……本当に鈍いよね。しかも、デリカシーの欠片もないよね。」
「何だよ、そこまで言わなくてもいいだろ!」
少し強い口調で言った俺をチラリと見ると、有美は、フッと笑みを浮かべた。
「仕方ないから、今回は、許してあげる。」
有美の言葉に、俺は、ホッとした。
「ありがとう。」
「どういたしまして。許さないと死にそうな顔してんだもの。」
「えっ……?」
改めて、有美を見た俺は、ドキッとなる。
いつも二つ結びに結んでいる長い髪が風に、優しくなびき、メガネは、かけているが太陽の光に照らされた有美は、とても、可愛かった。
「有美って……可愛んだな。」
俺の呟きに、一瞬、驚いた顔をしたが、有美は、フンと顔を背けた。
「お世辞なんて、いりません。」
「お世辞じゃなくて、本当に可愛いと思うよ。」
言った後に、恥ずかしくて、俺は、顔を赤くした。
「なんで誠が赤くなってんの!」
少し怒ったように言った有美の顔も赤くなった。
恥ずかしかったけれど、すんなりと出てきた言葉。
これって……もしかして……。
「俺……。有美の事、好きかもしれない。」
「えっ……?」
メガネの奥の目を丸くして、有美は、俺を見つめた。
驚いたような顔で見つめる有美に、俺は、更に言う。
「俺が好きだって言ったら、迷惑かな?」
しばらく黙っていたが、有美は、小さく、こう言った。
「ごめん……。誠の事、幼なじみとして好きだけど、恋愛の対象には、ならないな。」
『フラれた……!!』
俺は、ショックで目眩を感じた。
「でもね。私達、お友達から……。」
有美が何かを言ってるけれど、何も聞こえない。
俺……マジで、有美の事が好きだったんだ。
「私さ、高嶋さんの代わりとか嫌なの。誠……?聞いてる?おーい。」
ボォーとしている俺の目の前で、有美は、手をヒラヒラとさせる。
「分かった。もう、いいよ。そうだよな。うん……。」
そこまで言うと、俺は、フラフラの足取りで、公園を後にした。
「ちょっと……!誠ー!!」
有美の声が遠くで聞こえる。
フラれた。
完全にフラれました。思いきり。
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