第二章 次の日学校に行ったら何故だか人気者になっていて、すごくモテだしたんだが
放課後。
ラブレターでパンパンになったカバンを持って、俺が帰ろうとしたら、舞に声を掛けられて、ドキッとなった。
舞が俺に話し掛けてくれたなんて今まであっただろうか?
いや……待て待て。落ち着け、俺。
舞には、彼氏がいるんだ。冷静になれよ、俺。
「ねぇ、矢崎くん。話があるんだけど……ちょっと、いいかな?」
「は、話?な、な、何?」
バカか俺。何、焦ってんだ。
舞は、周りを見渡すと、小さな声で言った。
「ここでは……ちょっと。」
そう言うと、俺の手を取り、引っ張って教室の外に出た。
俺達は、屋上へ向かう階段の踊り場に来た。
周りに誰もいない事を確かめると舞は、優しい笑みを浮かべ、こう言った。
「矢崎くん、今、付き合ってる子いる?」
「いないよ……俺、モテないもん。」
ニヒヒと笑って俺が言うと、舞は、カバンの中から手紙を取り出した。
「これ……読んで欲しいな。あと手紙読んだ後、良かったらLINEくれないかな?LINEアドレスも、そこに書いてあるから。」
「えっ……?あっ、う、うん。」
「いい返事、待ってるね。じゃーね。」
そう言うと、舞は、タタタと何段か階段を駆け下りると、俺の方を振り返り、手を振った。
俺も、ぼんやりとした感じに手を振り返す。
これって……もしかして、愛の告白?!
ニヤニヤと笑い、舞から貰った手紙を両手で抱き締める俺。
「……キモッ。」
声が聞こえ、俺は、そちらの方に顔を向ける。
階段の下から見上げる有美の姿があった。
「何だよ、お前!いつから、そこに?」
「ずっと居たけど?」
「もしかして、俺達のあとをついて来たのか?」
「そうだけど?」
俺は、舞の手紙をカバンに入れると、階段を下り、有美の側へ向かった。
「キモいのは、どっちだよ。」
「私、言ったはずだよ?高嶋さんには、彼氏がいるんだって。」
「別れたかもしれないだろ。」
「別れてないわよ。嘘だと思うなら、そこの窓から、外を見て。二人仲良く帰っているから。」
有美の言葉に、俺は、踊り場の窓から外を見た。
校庭を歩く、舞と男の姿が見える。
「一条 隼人くん。中学の時から付き合ってるの。」
「中学の時から?」
「そう。一条くん、サッカー部でエースなんだって。すごくモテるのよ。美男美女のカップルだって噂なのに、知らなかったの?」
俺は、カバンの中から、舞から貰った手紙を取り出す。
「じゃあ……これは、どういう事だ?」
「だから、からかわれてるんだって。クラスの女子が誰が一番早く、誠を落とせるかって、勝負してんの。私、みんなが笑いながら話してるの聞いたのよ。高嶋さんだって、居たんだから。」
「ほんとかよ、それ?」
信じられない気持ちで俺は、有美の話を聞いていた。
「ほんとよ。高嶋さんね、誠が自分に気があるって事を知ってて「それなら、私が一番よ」なんて言ってたんだから。」
俺は、手紙を握ってた手に力を入れた。
「嘘だ……。」
「えっ……?」
眉を寄せ、見つめる有美に、俺は、怒鳴るように言った。
「舞ちゃんは、そんな事……言わない。いい加減な事を言うなよ!」
俺は、怒鳴ると、思わず、有美の肩を片手で押した。
軽く押したつもりだったが有美は、尻もちをつき、掛けてたメガネがカチャンと床に落ちた。
「あっ……ごめん。つい……。」
尻もちをついたまま、俯いている有美に俺は、謝った。
有美は、ゆっくりと顔を上げる。
「あっ……!」
幼なじみなのに、初めて有美がメガネを取った顔を見た気がする。
ウルウルと潤んだ目で俺を見つめる有美の顔は、とても、とても……可愛かった。
有美は、床に転がるメガネを取ると、立ち上がり、俺に怒鳴る。
「勝手にしろ!誠なんて……大嫌い!!」
言葉の最後は震えていた。
有美は、カバンを手に取り、階段を駆け下りて行った。
俺は、その場に動けずに、佇んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます