第一章 好きな女が出来たんだが理想が高過ぎて悩んで夜も眠れないんだが
ある日の昼休み。
俺は偶然、舞とその友人が話しているのをこれまた偶然、聞いてしまった。
「理想の男性か……。やっぱさ、頭が良くてカッコ良くて、そして……ついでに金持ちとか?!」
友人Aは、そう言うと、ガハハハと品の無い笑い声を上げる。
バッカじゃねぇーの?
はぁ?!理想の男性?!
お前、理想の男性を語れる顔してんのかよ!
何が頭が良くてカッコいいだよ!
しかも、ついでに金持ちだと!?
ふざけんじゃねぇーよ。
まぁ、頭が良くてカッコいい奴はいるにしても、金持ちだとー?!
俺達、まだ高校生なのに、何、おばちゃんが言うみたいな事、言ってんだよ。
てか、人の金、頼ってんじゃねぇーよ!
それを聞いてた舞が腕を組むと、こう言った。
「まぁ、それもいいけど……。やっぱり、優しい人がいいな。私、独占欲強いから、浮気しない人がいいかも。」
はぁー!やっぱり、舞!
言う事が違う!!
そうそう!男も女も優しいに限る。
独占欲が強い?!
いいよいいよ!独占しちゃってー!!
浮気なんてするわけないじゃん!
だって、俺は舞に惚れてんだぜ!!
もう、舞一人なんだからよ〜。
「でもさ。優しいだけじゃ、物足りなくない?」
はぁ?!物足りないだと?!
お前、舞が言った事に不満を持ってんじゃねぇーよ。
お前の理想じゃなくて、舞の理想なんだよ。
「そうかな……うーん。まぁ、好きになった人が理想なんじゃない?」
舞は、にっこり笑うと、そう応えた。
好きになった人が理想……。なるほど……。
って、それが分からないから、知りたいんだよ〜。
うーん、分からん。
舞は、どんな人が理想なんだろう?
てか、女って、理想高くないか?!
「キモッ……!」
俺の部屋のドアから中を覗いていた妹の優子が窓辺に立ち、夕焼けに染まる空を見上げ、うんうん唸っている俺を見て、一言、そう呟いた。
「何だよ!お前。勝手に人の部屋、覗くなよ!」
優子は、フンと鼻を鳴らす。
生意気な奴だ。中学一年なのに、彼氏がいる。
しかも、俺の妹なのに……可愛い。
「学校から帰ってきて、ボォーとしたまま、部屋へ行ったから心配して覗いてただけ。」
俺は、ドアの前に立つ、優子の側に行くと軽く息をついた。
「俺は、暇じゃないんだ。高校生にもなると、いろいろと悩む事があるんだよ。」
「ふーん……。中学の時も悩んでたじゃん。」
「うるさい!お前に恋愛の悩みが分かってたまるか!」
吐き捨てるように言った俺に、優子は、目を丸くした。
「恋愛で悩んでんの?お兄ちゃん?」
「な、何だよ!悪いかよ!」
優子は、軽く腕を組むと、俺をチラッと見る。
「もしかして……。好きな人って、中学の時の高嶋 舞ちゃん?」
「な、なな、何で分かった!」
「お兄ちゃんを見てたら分かるわよ。えっ……?じゃあ、あんなに受験勉強を頑張っていたのって、舞ちゃんと同じ高校に行く為だったの?」
「……そうだけど……?」
少し顔を赤くした俺を見て、優子は、プッと吹き出す。
「お兄ちゃん……キモッ。」
「キモキモ言うな!!」
俺は、怒鳴り、ドアを強く閉めた。
何なんだ、あの勝ち誇ったような顔は!?
自分に彼氏がいるからって、余裕こいてんじゃねぇぞ!
何で妹は、あんなに可愛いのに、俺は、イケてないんだ?
本当に兄と妹なのか?
はっ……!?
もしかして、俺、親父かお袋、どっちか違うのかも!?
だって、親父もお袋も、整った顔してる。
何で、俺だけーーー!!
不公平過ぎる……。チーン
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