不平等な愛情




 ポメガバース。通称、ポメガ。

 ポメガは疲れがピークに達したり体調が悪かったりストレスが溜まるとポメラニアン化する。

 ポメ化したポメガは周りがチヤホヤすると人間に戻る(戻らない時もある)。

 周りの人がいくらチヤホヤしても人間に戻らない時は、パートナーがチヤホヤすると即戻る。

 ポメガはパートナーの香りが大好きだから、たくさんパートナーの香りで包んであげるととてもリラックスして人間に戻る。

 男性でも、妊娠出産できる。


 昔は珍しく、また、奇妙奇天烈な病として、治療しようと国を挙げて躍起になっていたらしいが、今では、その人の持つ性質として受け入れられている。




 俺は、ポメガだが、十八年間生きてきた中で、ポメラニアン化した事は一度もなかった。

 体調不良とかストレスとか無縁の生活を送ってきているわけではない。

 みんなからは永遠の元気満々健康児だからポメラニアン化する事はないと言われているが、体調不良に陥る事もあるし、ストレスが溜まりに溜まる事もある。

 が、それでもどうしてか、ポメラニアン化した事はない。


 それは、何故か。

 みんなが言うように、永遠の元気満々健康児だからか。

 否。違う。

 俺は一つの結論を導き出した。

 パートナーが居ないからだ。

 運命の相手にまだ出逢っていないから、ポメラニアン化しないのだ。

 いや別に運命の相手に出逢ってないけど、しょっちゅうポメラニアン化するぜと言う同級生や先輩、後輩、親戚、近所の人も言うが、その人たちと俺は違うのだ。


 別にいいじゃないか。ポメラニアンにならなくても。

 口々に言われるし、まあ、そうだとも思うが。

 ポメラニアン化して、みんなに、チヤホヤされているポメガを見ていると、羨ましいと思うのだどうしても。

 特に、パートナーにチヤホヤされているポメガを見ていると、とっても大切にされているなあと思うのだ。


 大切にされていないわけではない。

 一人で育ててくれた母親も、兄弟も、気にかけてくれる親戚のおじさんおばさんも、近所の人も、学校の同級生、先輩、後輩も、先生も、とても大切にしてくれているのだが。

 大勢の内の一人、という枠から抜け出せない。

 与えられるのは、平等の愛情。

 たった一人、あなたにしか与えない、与えられない、そんな不平等な愛情がほしいのだ。











(2024.7.9)



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