人間同士
最近の若者は甚振る事しか考えていない。
喧嘩っちゅーもんがわかっとらんのです。
どうか、お願いします。先輩。
喧嘩部の後輩たちに、どれだけ非道で暴力的でも、可愛い教え子たちに、喧嘩の、喧嘩でしか通じ合えない、人間同士のやり取りっちゅーもんを教えてやってください。晴れやかな気分を味わわせてやってください。
今や立派な教師になった可愛い後輩の頼みである。
否と言えるか。
否。否と言えるわけがない。
体形はまだ高校生の時と変わらず。
会社に行きながらも、身体を鍛える事は怠ってもおらず、週末には仲間と喧嘩をする日々。
大船に乗ったつもりでいろ。
そうだな、今日は、七月一日、か。
七夕までには、わしが付きっきりで教えちゃるけゑ、大丈夫だ。
人間同士の会話を喧嘩でやる方法を叩き込んでやる。
そう、意義込んだのだが。
(今時の若者怖い。もう、喧嘩は鬱憤を晴らすもの、喧嘩はいじめとしか考えていない。甚振って、甚振って、喧嘩相手の尊厳を殴って蹴って潰す事しか考えていない。会話なにそれそんなもん必要ねえ俺の言葉だけをその薄っぺらい心身に叩きつけてろって事しかぶつけてこない。ぶつけるのはいいんだでもさ。おまえは何考えてんの教えてくれよって姿勢皆無。ふええ。怖い。三十代のおっちゃんだって挫けちゃうぞ)
高校の喧嘩部の可愛い後輩と連続喧嘩をして迎えた、七夕の翌日。
気が付けば、倒れていた身体はビシバシと朝日を浴びていた。
暑い、痛い、暑い、痛い。
挫ける。
「挫けるよおおぅ」
「あの。大丈夫ですか?具合が悪いんですか?」
げ。こんな寂れた公園には誰も来ないと思ったのに。
やだもう、こんな情けない姿を見られちゃった。
やだもう、いつもと違う口調で言わないとやってられないわ。
(いかんいかん。大丈夫だと伝えねば。っは。会社にも行かねば)
「いやいやなになに。親切な御仁よ。安心しろ。わしはただ地面と戯れておっただけよ。ふは。ふはははは」
俊敏に立ち上がると、話しかけてくれたその人物を見下ろしては、目を合わせたわしは、目を丸くした。
中学生らしき年若い男子学生が、突如として、ポメラニアンへと変化したのだ。
(2024.7.9)
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